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花・緑情報

木々の冬芽・葉痕2〜ホオノキ〜

2017.01.15 更新







 夜来の雪は2cmほどの積雪となり,園内はさながら雪国のようです。(写真1)そして時折薄日が差すものの,断続的に雪が舞う冬日です。気温も低く,午後1時現在で0.8℃。最低気温は−5℃近くまで下がっていました。こうした冬の厳しい気候から葉や花の芽を守るための冬芽をご紹介していますが,今日は綿毛のようなモクレンのものとは一味違う,硬質な感じを受けるホオノキの冬芽についてお伝えします。

 ホオノキはモクレン科モクレン属の落葉高木で,樹高が30mを超えるものも見られます。

 この木の材は落ち着いた色調を持ち,均質で緻密なことから様々な用途に利用されていますが,特に知られているのは下駄の歯としてです。朴歯の下駄をお持ちの方もおられるかと思います。

 この冬芽は枝先にあって,槍の鞘のようなものに包まれていますが,これは2個の托葉と葉柄が合着したキャップ状の芽鱗です。(写真2・3)

 前にご紹介した同属のモクレンは花芽と葉芽に分かれていましたが,この冬芽は花と葉の区別がない混芽で,4月の始めごろ,この冬芽から新しい葉が顔を出します。(写真4=2016/4/8撮影)そして葉は成長して輪生状に展開し,大変大きな葉になります。(写真5=4/29撮影)この葉は芳香とともに殺菌作用を持ち,地方によっては食材を包むために使われています。また古くは食器代わりに食物を盛るために使われていました。ホオノキの名前はその「包む」(包=ほう)ことからきたとする説もあります。

 5月初旬には大きく華やか,そして芳香を持つ花を咲かせますが,高い所に花をつけるため人目に付きにくいのが難点です。(写真6=5/3撮影)

 冬芽も高い位置にあるものは観察しにくいのですが,香りの道のものは道より低い場所に木があるため,眼前でご覧いただくことができます。冬を乗り切るための自然の知恵ともいえる堅固な冬芽を,じっくりとご観察なさってください。