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花・緑情報

イチゴノキ

2016.12.02 更新






 「イチゴノキ」と聞いて,どのような樹木か思い浮かぶ方はそれほど多くはないと思います。それは同属の植物が日本には自生せず,比較的最近になって園芸店などで見られるようになった種だからです。そのイチゴノキが今花と実をつけています。(写真1)

 イチゴ(苺)はバラ科植物ですが,このイチゴノキはツツジ科イチゴノキ属の常緑低木で,同じツツジ科であるアセビやドウダンツツジと似た花をつけます。(写真2)特にその釣鐘型の花はアセビとは区別がつきにくいほどよく似ています。(写真3=アセビ2/26撮影)

 この樹木の原産地は地中海地方と西ヨーロッパ北部の西フランスやアイルランドなどで,これらの国の冬の寒さにも耐えますが,本来は夏の乾燥に適した木で,アメリカ西海岸など地中海性気候の土地で一般的な庭園樹となっています。

 花とともにつく実はどちらかというとイチゴよりもヤマモモの実に似ていますが,ツブツブのある表皮がイチゴに似ているということでイチゴノキと呼ばれています。(写真4)この名前は英名であるストロベリーツリーを和訳したものです。この果実は甘く食用になりますが,果皮の食感の関係か,生食されるよりジャムや果実酒として利用されています。

 この花の受粉は自生地ではハチが媒介するようですが,日本では主に自家受粉で実をつけているようです。花の中を覗くと真ん中に1本のメシベがあり,その周りに10本のオシベが見えます。(写真5)

 このちょっと変わった樹木イチゴノキは見本園でご覧いただけます。他のツツジ科植物に先駆けて咲く花をお楽しみください。