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花・緑情報

秋草の小径に咲く花その4「タニジャコウソウ・ヨシノアザミ」

2016.09.20 更新








 今日は台風の接近により荒れ模様の天候です。警報が発表されており,本園でもご来園の方の安全のため,午後からは臨時休園とさせていただきました。

 そんな天気の中でも風雨に耐え,秋草が花を咲かせています。今日はその中からタニジャコウソウとヨシノアザミをご紹介します。

 タニジャコウソウはシソ科ジャコウソウ属に分類される日本固有種の多年草で,山地や谷間の草地に生育します。(写真1)

 唇形の花は下唇が長く鋸歯があります。写真では分かりにくいですが,花の内側上部にメシベが1本,先がひげ状になったオシベが2本見えます。オシベはその後ろにもあり,計4本です。(写真2)

 近縁種のジャコウソウと花が似ていますが,タニジャコウソウは長い花柄の先に花がつくのが特徴です。(写真3)またジャコウソウの分布が日本全土なのに対し,タニジャコウソウは関東以西です。

 ジャコウソウの名前は麝香つまりオスのジャコウ鹿の分泌物からつくられる香料に由来する名前で,茎や葉をゆするとふくいくとした香りが漂う(牧野植物図鑑より)ことからつけられた名前です。ただ実際にはそれほど香りはせず,資料によってはそのように書かれています。

 ヨシノアザミはキク科アザミ属の多年草で,近畿・中国地方と四国の一部に分布する,これも日本固有種の植物です。日当たりのよい山野に自生し,六甲山系では普通に見られます。(写真4)

 花は筒状花がたくさん集まって頭状花序を形成しています。(写真5)一つの筒状花は先が5裂した花弁を持ち,細長く伸びたメシベとそれをすっぽり包むオシベを持っています。(写真6)

 本種だけに限りませんが,アザミの仲間の多くに見られるように,葉は深い切れ込みと鋭いトゲを持っています。(写真7)アザミの語源については諸説ありますが,トゲの古語であるアザからきたという説,「傷つける」という意味のアザムが転訛したという説などがあり,この葉に由来している可能性が高いようです。ヨシノは植物学者である吉野善介氏の名前を冠したものです。

 台風が通り過ぎると天気も回復するようです。その折には秋晴れの中の秋草散策をお楽しみください。