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花・緑情報

つつじ園で〜ヤマジノホトトギス・ツルリンドウ〜

2016.09.19 更新









 先日つつじ園で咲くアキノギンリョウソウをご紹介しましたが,こちらは花期が終わりに近づくとともに,イノシシに踏まれたか残念ながらほとんど姿を留めていません。それに代わって美しい秋草ヤマジノホトトギスとツルリンドウが咲き始めています。

 ヤマジノホトトギスはユリ科ホトトギス属の多年草で,北海道南西部から九州にかけての山野に自生する日本固有種の植物です。(写真1)

 花の中心部のつき出した部分が印象的な花ですが,これはオシベとメシベが合わさって柱状になったものです。(写真2)メシベは3つに分かれていて,その先がさらに2つに分かれています。そしてその縁には透明な球状の突起があります。(写真3・4)

 6枚の花被片は平らに開き,白地に紫の斑点が美しい花です。近縁種にヤマホトトギスがありますが,この種の花被片は下側に強く反り返ります。そして全ての葉ではありませんが,緑地に濃緑色の斑状模様が見られるものがあり,この種を特徴づけています。(写真5)

 ホトトギスの名前は,初夏の象徴である野鳥のホトトギスに由来しており,この鳥の胸にある斑点に花の斑点をなぞらえたものです。「ヤマジノ」は「山路の」で,山道などで出会うことからきたものです。

 秋咲きの花を代表する花リンドウの名前を冠したツルリンドウは,リンドウ科ツルリンドウ属のつる性多年草です。茎はあまり伸びず,地表近くで花を咲かせます。(写真6)

 筒型の花はリンドウとよく似ていますが,濃い青色のリンドウと比べると色は薄く,形も小ぶりです。そのようにやや地味ではありますが可憐な花です。(写真7)

 花が終わったあとにつける実は,紅紫の色が印象的で,どちらかというと花より実の方が目立ちます。(写真8=2015/10/20撮影)液果であるこの実はリンゴを小さくしたような形と色です。

 リンドウは漢字で竜胆と書きますが,これはリンドウからつくられる生薬がかなり苦く,苦い生薬として知られる「熊の胆(い)」よりも苦いということで竜の胆「竜胆」と名付けられたそうです。そしてその音読みが転訛してリンドウとなりました。

 ヤマジノホトトギスはつつじ園とアジア区散策路,ツルリンドウはつつじ園の何か所かで確認しています。ただ自生種ですので探せば他にも見つかるかもしれません。ほの暗い木立の中で小さく美しい花との出会いをお楽しみください。