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花・緑情報

クズ

2016.08.16 更新









 昨日つる植物をご紹介しましたがほかにも多くのつる植物が見られます。多目的広場外周路のヒラドツツジにはヒルガオが巻き付いており,夏の太陽に輝く花を咲かせています。(写真1)そこからほど近く,萩の小径の駐車場側には秋の七草の一つであるクズが花を咲かせています。(写真2)

 トサミズキに巻き付いたクズは一見草の茂みにしか見えませんが,(写真3)葉に隠れるようにして美しい花が咲いています。(写真4)

 クズはマメ科クズ属のつる性多年草で,東アジアの温帯から暖帯にかけて広く分布しています。万葉の昔から人々に親しまれ,七草を定めた山上憶良の句にも「萩の花 尾花葛花・・」と詠まれています。

 葉と同時に円錐塔状の花序を直立させ,多くの花をつけます。一つ一つの花はマメ科の特徴である美しい蝶形で甘い香りも持っています。(写真5)

 この花は5弁花で,帆船の帆のように立ち上がった1枚の旗弁は紫で黄色のワンポイントが入っています。あとは2枚の翼弁と2枚が合わさった船弁で構成され,船弁の中には合着したオシベとメシベが収納されています。(写真6)

 葉は三出複葉(3枚の葉が1セットになったもの)で長い花柄を持ち,毛の生えた太い茎をあちらこちらに伸ばし,木々を覆い尽くすように繁茂します。時には植栽した苗木を枯らせることもあり厄介な雑草と思われがちです。アメリカにも飼料作物や庭園装飾用,そして緑化推進のため持ち込まれましたが,その繁殖力の強さから侵略的外来種にしていされています。その反面,根からはクズ粉や漢方薬がつくられるほか,かつて葉は家畜の飼料や肥料として利用され,つるの繊維からはクズ布がつくられていました。また丈夫な葉柄やつるを使って,子どもたちが草木遊びをしたり籠などの実用品がつくられたりしました。(写真8=葉柄やつるを使った一例)

 クズの名前は吉野の国「国栖(くず)地方」の人が根からとったくず粉を都で売ったことが由来とされています。(別説あり)漢字の葛は漢名です。

 そろそろお盆休みも終わりで秋風が立つ頃が近づいてきました。雑草として見過ごすことが多いクズですが,この美しい七草で秋をお感じください。

 なお写真でクズの葉柄などを使った草木遊び作品をご紹介しましたが,これなどを一例として様々な草木で遊んだり学んだりする「子どもフェスタ」を次の土・日(20・21日)に,そして親子で自然に親しみ自由研究にも役立つ「親子自然観察会」を20日に行います。ご参加をお待ちしています。(くわしくはイベント欄をご覧ください)