ナツツバキの仲間〜ヒメシャラ・コウライシャラノキ〜
2016.06.12 更新
今にも泣き出しそうな梅雨らしい空が広がっています。今日は今花を咲かせているナツツバキの仲間をご紹介します。
さくら園の少し先,長谷池に向かう斜面地がナツツバキ林です。ナツツバキの開花はもう少し先になると思われますが,階段を下りた先にその近縁種であるヒメシャラが花を咲かせています。(写真1)
ヒメシャラはツバキ科ナツツバキ属の落葉高木で,木の高さはナツツバキと変わりませんが,花も葉も小ぶりなのが特徴です。日本の特産種で,箱根以西から屋久島辺りまでの主に太平洋側の山地に生育します。
5弁の白い花はツバキ同様にかたまったオシベがよく目だっています。高木のわりには花が小さいため,咲いている花を観察するのは難しいのですが,ナツツバキ同様夕方には落花する一日花のため,落花した花は多く見ることができます。(写真2)
この樹木は赤褐色の薄い樹皮が部分的に剥がれ,鹿の子模様になっています。そしてそのすべすべとした木肌が美しいことで知られています。(写真3)花と合わせて木肌もぜひご覧ください。
ナツツバキの仲間を眼前で観賞できるのが,展示館前のコウライシャラノキです。(写真4・5)ヒメシャラ同様にナツツバキの近縁種ですが,こちらは朝鮮半島の特産種です。花はナツツバキとそっくりですが,こちらの方がやや花が平開しているようです。(写真6)
ナツツバキは平家物語の冒頭「沙羅双樹の花の色・・」で知られていますが,仏教の聖木である沙羅双樹はフタバガキ科の熱帯に育つ樹木で,日本では温室でないと育ちません。そのためいつからかは分かりませんが,一日花の儚い風情から沙羅双樹に模されて,この種がシャラノキと呼ばれ寺院などに植えられるようになりました。
初夏のひと時に咲くこれらナツツバキの仲間たち。清楚で儚げな雰囲気をお楽しみください。