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花・緑情報

冬のバードウオッチング7〜トラツグミ〜

2017.02.02 更新







 2月如月(きさらぎ)を迎えました。今朝も寒い朝となりました。今日は特有の体色を持つ鳥,トラツグミをご紹介します。(写真1)

 トラツグミはヒタキ科ツグミ亜科に分類され,資料では「六甲山系で繁殖期に観察される」とありますが,本園では1月後半から2月にかけて初めて姿を見せることが多い鳥です。本州から九州では留鳥または短い距離を移動する漂鳥とされており,積雪地から移動してくる個体が多いのかもしれません。

 体長は30cmぐらいと,ツグミよりやや大きくヒヨドリぐらいの大きさです。特徴的なのは名前の由来でもある黄褐色で黒褐色の鱗状の斑がある体色です。やや白っぽい体の下面にも同様の斑模様があります。(写真2・3)この姿が虎の模様を思わせることからトラツグミと呼ばれています。英語名もwhite`s(=白い)Thrush(ツグミ類)またはScaly(うろこ状の)Thrushとその色や模様が名前になっています。

 食性は雑食性で,落ち葉をかき分けながら採食する姿が見られます。(写真4)これは主に土中のミミズや昆虫類を捕食しているのですが,(写真5)特に冬季は木の実なども食べているようです。姿が見られるのはほとんどが地上ですが,驚いた時は木の上に移る場合もあります。(写真6)

 トラツグミは主に夜間に鳴きますが,その「ヒョーヒョー」という悲しげな声は,万葉集において鵺(ぬえ)鳥として悲しい出来事を表す言葉や枕詞として詠まれています。

 「ひさかたの 天の河原に鵺鳥の うら泣きましつ すべなきまでに」(柿本人麻呂 万葉集)

 また平家物語では怪物として扱われています。これはその声の主が分からなかったため,不吉な生き物と思われたためでしょう。

 かつては化け物扱いされたトラツグミですが,ご覧いただいたようにおしゃれな色合いを持ち,特有のユーモラスな動きも見せる鳥です。時には展示館前にも現れますので,じっくりとご観察ください。