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花・緑情報

冬のバードウオッチング5〜シメ〜

2017.01.24 更新







 この度の寒波は西日本の日本海側に豪雪をもたらしました。交通の乱れなどなにかと大変な目に遭われた皆様方には,心よりお見舞い申し上げます。

 本園でも一面の雪景色となりましたが,雪の降り積もったイロハモミジの枝に,大群のアトリが舞い降りてその実をついばんでいました。(写真1)アトリは前にもご紹介したように群れで行動しますが,逆にほとんど単独で行動する鳥がシメです。

 シメはアトリ科シメ属に分類される,スズメよりやや大きいずんぐりむっくりとした体形の鳥です。(写真2)また目の周りが黒く縁取られているため,目つきが鋭く見えいかつい印象を受けます。(写真3)大きく太いクチバシがそれに輪をかけています。(写真4)

 食性は主に植物の種子ですが,果肉の部分は食べずその大きなクチバシで硬い種子を割って中身を食べます。「蝋嘴鳥」(ろうしちょう)という別名はクチバシの色がロウに似ていることからきています。ただロウのように脆いわけではなく,見掛け通り堅いものも噛み砕く力強いクチバシです。

 雌雄の違いはジョウビタキやルリビタキほどはっきりしたものではなく,メスの風切羽の一部が灰色であるとともに,目の周りの黒い部分が薄いなどが挙げられています。定かではありませんが,次の個体がこれにあてはまるように思えます。(写真5・6)

 ユーラシア大陸に広く分布していますが,国内でも北海道や本州中部以北で繁殖し,冬に南に移動します。そのため国内や高山から低山へというような狭い範囲を移動する「漂鳥」と考えられます。

 シメという変わった名前の由来は「シー」や「シッ」と聞こえる鳴き声と,鳥を意味する接尾語の「メ」が合わさったとする説が有力です。

 群れていないため探し当てるのは難しいのですが,たまたま見上げた樹上でその姿に出会うことがあります。出会えればそれほど動き回る鳥ではないので,じっくりご観察ください。