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花・緑情報

震災の日を前に〜防災の木〜

2017.01.16 更新










 今年も1月17日が巡ってきます。阪神淡路大震災から早や22年。街は復興し震災の痕をとどめるものも少なくなってきていますが,その傷跡や記憶は心に深く刻まれています。犠牲になった多くの方々に心より哀悼の意を表します。

 その震災の記憶をとどめるものの一つに「神戸の壁」があります。もともと神戸市長田区の公設市場の防火壁として建てられたものですが,神戸大空襲そしてあの震災に伴う猛火に耐え抜き,今は淡路の北淡震災記念公園に保存されています。これは建造物ですが,防災目的に利用される樹木も多くあります。今日はその中からいくつかをご紹介します。

 燃えにくい木として防火に利用されるものにカシやシイの仲間があります。その代表的なものがアラカシとスダジイで,どちらもドングリの木として知られています。(写真1アラカシ・2スダジイ)

 アラカシはブナ科コナラ属の常緑広葉樹で,日本では東北以南に分布します。人里近くの雑木林に多く見られ,公園樹としても利用されます。

 5月頃葉の展開とほぼ同時期に黄色い花をつけますが,(写真3=2016/5/6撮影)それほど目立つものではありません。

 スダジイも同じブナ科植物(シイ属)で,普通シイという場合は本種を指します。暖地性照葉樹林を代表する樹種の一つで,日本では福島県・新潟県以南に分布します。

 この花もアラカシとほぼ同じ時期に花をつけますが,この花はこれも同科のクリのものとよく似ています。(写真4=2016/5/20撮影)

 これらの植物は表皮組織のクチクラ層が発達していて塩分が侵入しにくいため,潮風に強く防潮にも利用できます。

 そして通常の防潮だけでなく,非常時には津波の力も弱めるための樹木として優れているのがクロマツです。(写真5)

 マツ科マツ属の常緑高木で,本州から九州にかけての海岸沿いに自生します。乾燥や湿気に強く,耐潮性に優れるとともに,樹高が高く防風効果が高い海岸沿いにうってつけの木です。同じ仲間のアカマツ(写真6)も防災林に利用されますが,耐潮性という点ではクロマツに一歩譲るようです。この二つのマツは樹皮の色で見分けられますが,クロマツの方が葉がしっかりとしていて硬いという点でも区別できます、(写真7)

 自然災害ではありませんが,防犯という意味では葉にトゲがあるヒイラギ(写真8)やヒイラギモクセイ(写真9)が有効です。これらがよく生け垣に利用されるのも,防犯が一つの目的なようです。 

 これらの木々はいずれも園内でご覧いただけます。木をご覧いただくことで改めて防災や減災への思いを高めていただければと思います。