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花・緑情報

受験生の皆様へ〜受験のお守りの木〜

2016.12.18 更新









 師走も半ばを過ぎ,年末・年始のお休みを楽しみにしておられる方も多いと思います。また子どもたちは冬休みやクリスマスそしてお正月など浮き立つ気持ちで待っていることでしょう。けれども受験を控えた方々にとっては別世界のように聞こえているかもしれません。そんな頑張っている受験生の皆様方に「受験のお守りの木」をご紹介します。その一つが「落ちない木」ヤマコウバシです。(写真1)

 ヤマコウバシはクスノキ科クロモジ属の低木で,山形県以西の本州・四国・九州に自生します。その葉はさして特徴あるものではありませんが,葉を落とした木々や常緑樹の中にあって,茶色の葉を残したこの木はよく目だっています。

 この葉は新緑が展開するころまで残り,それと入れ替わるように花を咲かせます。(写真3=4/17撮影)「落ちずに春花開く」この木は受験のお守りにぴったりです。

 落葉樹が葉を落とすのは,落葉前に葉柄の付け根に離層と呼ばれる細胞層が形成されるためですが,このヤマコウバシの場合,はっきりとした離層が形成されないことが落葉しない理由です。同様の理由で「落ちない木」に柏餅に使われるカシワ(写真4)があります。

 ヤマコウバシは「山香ばし」つまり葉や枝に香気があり,葉を揉んだり枝を折ったりすると香ばしく薫ることが名前の由来です。

 また落ちない木でも葉ではなく実が落ちない木もあります。それはスズカケノキ。その名前の通り,鈴を懸けたような形の実が木一杯に成り,風に揺られています。(写真5)学名であるプラタナスの名前でも知られるこの木の実は,果柄の繊維が強く,ぶら下がったまま冬を越します。そして春に綿毛のような種子を風に乗せて散布します。

 さらに「学問の聖木」と呼ばれる樹木があります。それがカイノキです。(写真6=10/8撮影)儒教の祖孔子の墓所である孔林に代々植えつがれるとともに,各地の孔子廟にも植えられています。また古代中国の超難関官吏登用試験「科挙」の合格者には,カイノキでつくられた笏(しゃく)が贈られたそうです。

 カイノキについては花(写真7=4/27撮影)と実(写真8=11/3撮影)の画像をお届けします。皆様方の努力が「花開き」そして「実を結ぶ」ことを心より祈念しております。

 また勉強で疲れた頭と心を癒すためには森林浴がおすすめです。ぜひ森林植物園で安らぎのひと時をお過ごしいただくとともに,樹木の持つパワーを吸収していただき来るべき時にお備えください。