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花・緑情報

カエデの仲間の実〜翼果〜

2016.12.15 更新








 尾が長く可愛らしい野鳥エナガがさかんについばんでいる実は,一か月ほど前に美しい紅葉で目を楽しませてくれたイロハモミジの実です。(写真1)この実はまだ葉が青々としていた頃からついていて,その時はそれほど目立っていませんでしたが,葉を落とした今は鈴なりの実がよく目に付きます。(写真2)この実は風に吹かれて運ばれる翼果です。今日はこのイロハモミジをはじめカエデの仲間の翼果をご紹介します。

 翼果は別名翅果とも呼ばれ,子房が薄膜状に突出して,果実の翼状になったものです。(ブリタニカ大百科事典より)本園ではアキニレやニワウルシその他にも翼果が見られますが,(写真3=ニワウルシ6/25撮影)特にカエデの仲間に特徴的に見られ,それも2つの子房がそれぞれ1枚ずつの翼をつけプロペラのような形になっています。そのためフワフワと風に乗るのではなくクルクル回りながら運ばれていきます。

 長谷池周辺ではウリハダカエデが枝一杯に翼果をつけています。(写真4・5)イロハモミジ同様に美しい紅葉が秋を彩りましたが,今は実だけが存在を主張しているようです。葉はイロハモミジほど大きな切れ込みはありませんが,紅葉と実の形が同属であることを示しています。

 よく似た名前のウリカエデもたくさんの翼果をつけています。(写真6)ともに若い木肌がウリに似ていることに由来する名前ですが,「ウリハダ」と「ウリ」に使い分けられている理由は定かではありません。葉はウリハダカエデよりもずっと小さく,紅葉しない(鮮やかな黄色になります)ため同じ仲間のようには思えませんが,やはり実の形が仲間であることを物語っています。

 オオモミジはイロハモミジ以上に紅葉が美しく,大振りな葉や花も美しいカエデの仲間ですが,実もイロハモミジより大きな実をつけます。(写真7)そのため葉を落としたこの時期でもイロハモミジと区別することができます。

 カエデの仲間ではありませんが,翼果の中で最大といわれるものは東南アジアや南米などに生育するアルソミトラというウリ科のつる性植物で,長さは15cmほどあるそうです。この実が飛ぶ姿はきっとカエデとは違った趣きがあるのでしょう。