トップ / 花・緑情報 > 森林植物園のいま(バックナンバー) /

花・緑情報

香りの道の黄色い実

2016.12.11 更新







 今朝の最低気温は1.5℃とこの冬一番の冷え込みです。それでも眩しいほどの光が降り注ぎ,陽だまりではぽかぽかとしています。さて,先に香りの道の赤い実についてお知らせしましたが,今日は黄色い実をご紹介します。一つはこれも前にご紹介したカリンで,豊作の今年は,葉を落とした木についている大きな実がよく目だっています。(写真1)そしてそのカリンのすぐ近くで,枯れた葉とともにぶら下がっている黄色い実が見られます。これはキカラスウリです。(写真2・3)

 キカラスウリはウリ科カラスウリ属の多年生草本で,北海道南部から四国・九州まで幅広く分布しています。木に成っている実のようにも見えますが,ウリハダカエデやハクウンボクに絡みつきながら成長したつる(茎)から出ているものです。

 真夏に花を咲かせますが,5弁で縁が糸状にさけてレースのように見える非常に特徴的な花です。(写真4)またこの花は夜に開花するという点でも特徴的です。この花の花粉媒介は夜行性のスズメガが担っており,この姿もガに目立ちやすいためといわれています。この種は雌雄異株ですが,雌花は花の付け根の子房がふくらんでいるため,(写真5)雌雄の判別は容易にできます。

 カラスウリ類の多くは朝には花が萎んでしまいますが,キカラスウリは昼近くまで花が開いていることが多く人目にとまりやすくなっています。ただ熟すと赤くなるカラスウリの実を園内で見かけることはほとんどなく,この近辺では黄色い実のキ(黄)カラスウリの方が一般的なようです。

 カラスウリは漢字で「烏瓜」と書きますが,別にカラスがこの実を好む訳ではなく,その赤い実を中国渡来の朱墨の原料である辰砂に擬えて,唐朱瓜(からしゅうり)と呼んだことが語源といわれています。

 キカラスウリは自生種であるため香りの道以外でもご覧いただけます。西洋あじさい園入口付近でもアカマツに絡みついたものが実をつけています。(写真6)ほかにも探せば見つかるかもしれません。