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花・緑情報

鈴なりの木々1〜ノグルミ・オオバヤシャブシ〜

2016.12.10 更新







 晴れ上がった空と凛とした冷たい空気の冬らしい一日です。すっかり落葉したモミジバフウの枝には鈴なりの実がついており,青空にシルエットになって浮かび上がっています。(写真1)今日はこのように,葉を落として残った実が目立つ木々をご紹介します。その一つがシャクナゲの上から枝を伸ばしているノグルミです。(写真2)

 ノグルミはクルミ科ノグルミ属の落葉高木で,樹高は20m以上になります。暖帯性の樹木で近畿地方から中四国そして九州北部に分布しています。

 初夏につける花は雌雄異花で,雄花序に囲まれるように雌花序がついています。(写真3=6/18撮影)この雌花序が受粉・成長して果穂になりますが,この実は同科のオニグルミのように食用にはならず,どちらかというとハンノキの仲間のように見えます。

 下から見上げるとそのノグルミによく似た実(果穂)をつけているのが,ハンノキの仲間であるオオバヤシャブシです。(写真4)

 カバノキ科ハンノキ属の落葉小高木で,関東地方南部から紀伊半島までの地域に自生しますが,治山や肥料木として用いられ広く植栽されています。

 花はノグルミ同様雌雄異花で,この雌花序の中に赤っぽい雌花がたくさんついています。(写真5=3/11撮影)形からお分かりいただけるかと思いますが,この雌花序も成長して果穂になります。この果穂はタンニンを多く含み染色につかわれます。オオバヤシャブシ(大葉夜叉五倍子)の名前は,実の形を夜叉に例え,同じようにタンニンを含む五倍子(ふし=ヌルデの虫こぶ)の代用として使われたことに由来しています。

 これらの実(果穂)の違いは,遠目では分かりにくいですが,比べるとノグルミがとげとげしい形をしているため,容易に区別できます。(写真6)

 園内各所で見られるこの二つの種は,ともに冬鳥に好まれるため,アトリやマヒワなどがついばむ様子もご覧いただけるかもしれません。