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花・緑情報

秋の実り8〜ツクバネ〜

2016.11.28 更新








 秋は実りの季節。多くの植物が実をつけ,次の世代に命を繋ごうとします。ドングリの仲間は比較的早い時期に実(種子)つまりドングリを播き,そこの場所で,また動物に運んでもらった所で仲間を増やそうとしています。またじっくりと成熟の時を待っている植物もあります。その一つがツクバネです。今日はその特徴ある実をご紹介します。(写真1)

 ツクバネはビャクダン科ツクバネ属の落葉低木で,本州・四国そして長崎・佐賀など九州北部に分布しています。同属植物は日本には本種のみで,東アジアや北アメリカに3種が分布します。

 一見独立した木のように見えますが,スギ・モミ・ヒノキなどの根から養分をもらっている寄生植物です。ただ緑の葉をつけていて自分で光合成も行っているため,正確には「半寄生」ということになります。(写真2)本園のものは,おそらく周辺にあるヒノキなどを宿主としていると思われますが,アセビやカエデ類などにも寄生するようです。

 雌雄異株で,5月初めごろにつける雄花はいたって目立たない花です。(写真3=5/5撮影)雌花も花自体は目立ちませんが,葉状の苞がツクバネを特徴づける実を彷彿とさせます。(写真4=5/5撮影)そして今は黒く熟した実が枝にぶら下がっています。(写真5)

 この実をご覧になって名前の由来がお分かりになった方は,きっとお正月に羽子板で遊んだことがある方だと思います。つまりこの実は羽子板の羽根そのものの形で,羽根を衝くことから「ツクバネ」と呼ばれています。(この実を手で衝いて遊んだのが羽根つきの始まり・・という説もあります)ただこの実自体が羽根つきに使われるわけではなく,あの羽根はムクロジの黒い種子に鳥の羽をつけたものです。(写真6ムクロジの実と種子)

 この形からお分かりいただけるかと思いますが,この実は風によって散布される実です。(写真7)熟してもすぐには落ちず,強い風が吹いた時に風にのってクルクル回りながら飛んでいきます。

 ツクバネはシャクナゲ園散策路でご覧いただけます。前述のように雌雄異株ですので実がついている木をお探しください。(展示館側から行くとはじめに雌株に出会います)