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花・緑情報

紅葉だより7〜ハウチワカエデ〜

2016.11.09 更新








 正門から長谷池に向かう園路の途中,あじさい園入口付近に鮮やかな黄色で一部が赤く色づいている木があります。これはハウチワカエデです。(写真1・2)

 名前が示すようにカエデの仲間であるムクロジ科カエデ属の落葉高木で,樹高は5〜15mぐらいになります。

 日本固有の樹木で,北海道から本州にかけての山地,特に低山帯から亜高山帯の谷間などに自生します。ブナ林帯でも多く見られます。

 昨日ご紹介したイロハモミジに比べて葉が大きいため,山地の樹間から見えるこの樹木の紅葉は目を引きます。

 掌状の葉は少しイロハモミジと似ていますが,切れ込みが浅く,その数も9〜11裂とイロハモミより多いため,容易に見分けることができます。

 4月の始めから中頃にかけて,葉の展開とほぼ同時に暗赤色の花をつけます。(写真3=4/11撮影)花も葉と同様イロハモミジよりも大きく華やかです。ただこの木はイロハモミジほどは庭木や公園樹として利用されていないため,人目につくことは少ないと思われます。

 紅葉する樹木は秋に離層ができた後,光合成により蓄えられた糖分が赤の色素であるアントシアニンに変わることで赤く発色します。このハウチワカエデが黄色で一部だけ赤くなっているのはやはり日当たりの関係かと思われます。(写真4)

 ハウチワカエデの類似種にコハウチワカエデがあり,これも園内で鮮やかに色付いています。(写真5・6)名前に「コ」(小)がつくように,ハウチワカエデと比べて葉が半分ぐらいの大きさで,切れ込みがやや深いのが特徴です。(写真7)この木も山地に自生する日本固有種です。

 ハウチワカエデの名前は,伝説の生き物である天狗(てんぐ)が持つ羽でできたウチワ,羽団扇(ハウチワ)に葉の形が似ていることに由来しています。別名メイゲツカエデとも呼ばれますが,これは秋の月光に美しく映えるという意味かと思われます。

 見頃となったイロハモミジやハナノキと合わせて赤や黄色の競演をお楽しみください。