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花・緑情報

紅葉だより6〜イロハモミジ〜

2016.11.08 更新







 紅葉といえば誰もが思い浮かべる日本の紅葉を代表する樹木,イロハモミジの色付きが進み,一部はすでに見頃を迎えています。(写真1・2)

 「嵐吹く 三室の山のもみじ葉は 龍田の川の錦なりけり」(能因法師 後拾遺集)

  百人一首でも知られるこの句のモミジはイロハモミジと考えられます。また多くの和歌に詠まれているもみじも同様でしょう。

 イロハモミジはムクロジ科(旧カエデ科)カエデ属の落葉高木で,日本をはじめ朝鮮半島や台湾,中国に分布しています。日本では福島県以西の本州から九州にかけての平地や低山に生育します。

 紅葉の美しさはいうまでもありませんが,4月に花とともに展開する新緑も大変瑞々しく,(写真3=4/19撮影)野山の春から初夏を彩ります。

 紅葉は「こうよう」と「もみじ」の2つの読み方があります。もともと「もみじ」という言葉は,揉んで染め出す紅色の「もみ」からきた「もみず」という動詞を語源としています。この言葉がイロハモミジに与えられたのはその紅葉と葉の形そして樹形の美しさ(写真4)が日本人の琴線に触れるからでしょう。ちなみにカエデの仲間でモミジとつくのは他にオオモミジやヤマモミジなどがありますが,いずれもイロハモミジの変種です。

 なおイロハモミジのイロハは5〜7裂するその葉の裂片を「いろはに・・」と数えたことに由来するといわれています。(写真5)

 長谷池周辺では先にご紹介したハナノキがまさに一番の見頃となり,イロハモミジとともに鮮やかな秋景色をつくっています。(写真6※手前がイロハモミジ 奥がハナノキ)そして今見頃のイロハモミジの旬が過ぎた頃には,少し遅れて紅葉するもみじ坂や野鳥の森のイロハモミジが見頃を迎えます。しばしの間イロハモミジの競演が秋を満喫させてくれるはずです。