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花・緑情報

北アジア区散策路で咲く花〜リンドウ・ヤマラッキョウ〜

2016.11.07 更新








 今日11月7日は立冬です。暦の上ではもう冬を迎えたことになります。それでも午後には気温が上がり,汗ばむ陽気になりました。そんな秋の陽光に輝く花を咲かせているのがリンドウです。(写真1)

 リンドウはリンドウ科リンドウ属の多年生草本で,山道などで見られる秋を代表する花です。この仲間は広く世界に分布しており,リンドウ科に属する植物は1150種以上あるといわれています。

 茎の先につく花は,筒状の鐘形をしており先が5裂しています。(写真2・3)この花は両性花ですが,雄性先熟つまりオシベが花粉を出した後でメシベが受粉できる状態になります。最初はオシベがメシベを包み込み一つになった状態で花粉を出します。(写真4)そして花粉を出し終わるとオシベがメシベから離れて花粉を受け取れるようになります。(写真5)こうして自家受粉することを防いでいます。

 リンドウは漢字で「竜胆」と書きますが,その日本語音読みである「りゅうたん」が訛ってリンドウになったといわれています。この根を乾燥させたものが生薬の竜胆ですが,これは大変苦みが強く,「熊の胆」よりも苦いという意味で「竜の胆」竜胆と名付けられたということです。

 野に咲くリンドウは光に敏感で,曇りや雨の日はもちろん少し日が陰ると花を閉じてしまいます。お日様がたっぷりの今日も,日当たりの加減か午後2時過ぎには半数が花を閉じていました。ぜひ秋晴れの午前中にご覧ください。

 このリンドウが咲く北アジア区散策路では,2株ほどですがヤマラッキョウも見られます。(写真6)ササに隠れるようにして咲くヤマラッキョウはユリ科ネギ属の多年草で,福島県以南の本州から沖縄そして朝鮮半島や中国にも分布しています。

 花弁に球状にたくさんついた花は,6枚の花被片を持ち,6枚のオシベがつき出ています。(写真7)

 ヤマラッキョウの名前は山に生えるラッキョウという意味で,花もラッキョウとよく似ています。この球根もラッキョウと同じような形をしていますが,一般的には食用にはされていないようです。

 この北アジア散策路は他にもツリガネニンジンやワレモコウなども見られます。紅葉散策においでいただいた方も,お時間が許せば少し迂回していただき野の花をお楽しみください。