トップ / 花・緑情報 > 森林植物園のいま(バックナンバー) /

花・緑情報

紅葉だより5〜ハナノキ・ラクウショウ〜

2016.11.03 更新








 今日文化の日も爽やかな秋晴れとなりました。青空の下,早い紅葉がよく映えていますが,長谷池周辺で一足早く紅葉したのがハナノキです。特に朝の光を浴びると一段と輝きを増します。(写真1)

 ハナノキはカエデ科カエデ属の落葉高木で,高いものは30m近くになります。日本固有種であるこの樹木は,花や紅葉が美しいため庭木や公園樹として利用されますが,自生地は木曽川流域などごく限られた地域です。そのため自生地のいくつかは天然記念物に指定されています。この種の希少さは古くから知られていたようで,国の天然記念物制度発足後すぐの大正9年(1920年)に岐阜県中津川市の自生地が指定を受けています。

 この紅葉はイロハモミジなど他の紅葉とは少し違った色合いを見せます。これは葉の裏が白いためで,(写真2)見る角度が違うとまた違った色に見えます。(写真3)さらに黄や緑混じりの葉もあり,それらも他の紅葉とは違った味わいを醸し出しています。(写真4)

 ハナノキ(花の木)の名前は,3月下旬から4月にかけて,葉が展開する前に赤い花をつけることに由来しています。(写真5=4/5撮影 雌花)

 赤く葉を染めたハナノキに対し,同じ長谷池周辺で黄色や華やかな茶色に染まっているのがラクウショウです。(写真6※手前と向こう側)

 ラクウショウはスギ科ヌマスギ属の落葉針葉樹で,北アメリカを原産地としています。メタセコイアやスイショウ,カラマツなども園内で見られる落葉針葉樹ですが,ラクウショウはこれらに先駆けて黄葉します。

 ラクウショウ特に長谷池周辺のものに見られる特徴は,「気根」と呼ばれる呼吸根を出していることです。(写真7)ラクウショウは別名ヌマスギと呼ばれ湿潤地に適した樹木です。そして根元が水に浸かった状態で自生するものも多く見られます。そのため根での呼吸をしやすくするために根を立ち上げています。ラクウショウは通常の土地でも生育し,展示館前でも見られますが,これらにはほとんど気根は見られません。

 長谷池ではイロハモミジやウリハダカエデも日当たりのよい所から順に色付いています。今日ご紹介した木々も含めて,錦に包まれるまでもう一息です。