トップ / 花・緑情報 > 森林植物園のいま(バックナンバー) /

花・緑情報

秋の実り6と色づく木々

2016.11.02 更新








 11月を迎え一層秋の深まりを感じるようになってきました。木々は彩りを増し,たわわな実りをつけています。今日はその中から香りの道のカリン(写真1・2)とイイギリ(写真3)の実りをご紹介します。

 カリンはバラ科カリン属(以前はボケ属)の落葉小高木で,中国を原産地としています。日本への渡来ははっきりしていませんが,およそ1100年前に弘法大師が唐から持ち帰ったといわれています。

 4月の中頃咲かせる花はバラ科植物らしい5弁花で,小さく可憐な花です。(写真4=4/18撮影)実は花からは想像しにくい,大きくごつごつとした武骨な形をしていますが,古くからのど飴などの民間療法に利用されてきました。またお酒に漬け込んで果実酒にしたり,砂糖漬けやジャムにしたりと多用途に利用されています。

 カリンの名前は,その木目がフタバガキ科のカリン(花櫚)に似ていることに由来するようですが,熱帯性であるフタバガキ植物は日本では見られません。カリンは漢字表記では「花梨」と書きますが,これは当て字です。

 香りの道でカリンを見た後,もう少し進みリガの森に出る辺りで頭上を見上げていただくと,ブドウのように赤い実をぶら下げているのがイイギリです。

 イイギリはヤナギ科(旧イイギリ科)イイギリ属の落葉高木で,山地に生え樹高は15〜20mぐらいになります。この樹皮は白っぽく,皮目(ひもく=気孔に代わって空気の流通を司る組織)が目だっています。(写真5)

 この実はツグミやヒヨドリなど野鳥が好んで食べますが,人間も生食することができるそうです。(苦いという資料もあります)(写真6)

 キリ(桐)の仲間ではありませんが,その材が白く柔らかくて桐に似ており,その代用として使われることがあるため「キリ」とつけられたようです。さらにかつて丸くて大きな葉でご飯を包んだことで飯桐(イイギリ)と呼ばれるようになりました。

 これら秋の実りとともに木々も日々色づいてきています。先にご紹介したモミジバフウも更に彩りを深めてきました。(写真7)残暑の影響で少し色付くのは遅くなりましたが,そのぶん11月になっても鮮やかな色を保っています。ぜひ合わせてご覧ください。