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花・緑情報

水辺の宝石と長谷池の色付き〜カワセミ〜

2016.10.28 更新







 少しずつ木々が色付きつつある長谷池で,朝のしじまをついて「キキーッ」という高く鋭い鳴き声が聞こえてきました。そして輝くような青い姿を現したのがカワセミです。(写真1)

 カワセミはカワセミ科カワセミ属に分類される水辺の鳥で,長いクチバシと鮮やかな体色が特徴的です。また胸部から腹部にかけては薄茶色の毛に覆われています。(写真2・3)

 高緯度地域に住むものは冬に暖かい地域に移動することがあり,北海道では夏鳥ですが多くの地域では留鳥として一年中見ることができます。ただ本園では夏にはほとんど姿を見せず,秋から冬にかけてよく現れます。これは夏には長谷池がアサザやスイレンの葉で覆われており,カワセミが得意とする水中にダイブしての小魚の捕食ができにくいためかもしれません。(本園では水質保全と景観保護のため,花が終わった秋にこれらの葉を取り除いています)

 カワセミは漢字では翡翠と書きますが,これは宝石の「ヒスイ」と共通しています。おそらくその輝きが共通するためなのでしょう。ただこの青は色素によるものではなく,羽毛にある微細構造により,光の加減で青く見えることによるものです。これを構造色と呼び,シャボン玉が様々な色に見えるのと同じことだそうです。

 カワセミのカワは川に棲むことに由来し,セミは青土を表すソニが変化したものといわれています。古くは「ソニドリ」と呼ばれていたこともあります。カワセミを川蝉と書くこともありますが,これは当て字です。

 カワセミが現れる長谷池ではハナノキ(写真4)やウリハダカエデが彩りを深めつつあり(写真5)池を取り巻くイロハモミジも日当たりのよいところから紅葉しはじめています。(写真6)これからはカワセミの姿を見かける機会も増えてくるはずです。赤や黄に染まった葉と青い鳥との美しい色の競演をお楽しみください。