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花・緑情報

秋の実り2〜サンザシ・コバノガマズミ〜

2016.10.06 更新








 台風が過ぎ秋らしい日和の一日となりました。その秋の日差しを受け,木々の実りが色付きを深めています。今日はその中からサンザシ(写真1)とコバノガマズミ(写真2)の美しい実をご紹介します。

 サンザシはバラ科サンザシ属の落葉低木で,中国を原産地とし,日本には江戸時代(享保年間)に朝鮮半島を経由して渡来しました。

 5月の中頃,バラ科植物らしい5弁の清楚な花を咲かせ,(写真3=5/17撮影)秋にはリンゴを小さくしたような実をつけます。(写真4)この実を天日で乾燥させたものが生薬の山査子(さんざし)で健胃・消化・整腸などに用いられています。また果実酒やドライフルーツとして食用にもされています。この木はさくら園から西門に向かう園路沿いに植栽されていますが,赤い実をつけている株に混じって黄色い実をつけた株もあります。(写真5)これは未成熟なものではなく,キミノ(黄実の)サンザシという近縁種です。

 サンザシの名前は,山査(さんざ=クサボケ)の実に味が似ていることから山査子と呼ばれるようになったのが由来とのことです。

 小さな実ではありますが,輝くように艶やかなのがコバノガマズミの実です。(写真6)

 レンプクソウ科(以前はスイカズラ科)ガマズミ属の落葉小高木で,福島県以西の本州・四国・九州の山地に自生します。

 サンザシが咲く少し前,4月の末から5月初旬に5cmぐらいの横に広がった花序をつけ,小さな白い花を密生させます。(写真7)そして秋につける赤い実は,やや酸味が強いものの,他のガマズミ属の実と同様に食べられるそうです。

 コバノ(小葉の)ガマズミの名前は,ガマズミやミヤマガマズミなどの近縁種に比べて葉が小さいことに由来しています。ガマズミについては諸説ありますが,この赤い実が関係しているようで,「赫つ実(かがつみ)=赤い実」からきた,神へのお供え物にしたため「神つ実(かみつみ)」と呼ばれた,ほかにも実を染料にしたため「染め」と呼ばれたなどもあります。

 コバノガマズミは園内各所,特に香りの道などでご覧いただけますが,北アメリカ区奥のものが見応えがあります。サンザシの実とともに実りの秋をご満喫いただけるかと思います。