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花・緑情報

オケラ

2016.10.04 更新






 「オケラ」と聞くと水かきのような手を持つ昆虫を想像する方がほとんどかと思いますが,今日ご紹介するのは植物のオケラです。(写真1)

 オケラはキク科オケラ属の多年草で,本州から九州にかけての日当たりのよい草地や明るい林などに生育します。日本以外でも朝鮮半島や中国東北部に分布しています。

 茎の先に頭状花序を一つつけ筒状の花をたくさん咲かせます。(写真2)一つ一つの花は先が5つに裂けており花柱を伸ばしています。(写真3)メシベの先は2つに分かれています。(写真4)

 キク科植物で多くの筒状花を持つ種は多数ありますが,この種を特徴づけているのは葉を包むように取り巻く苞葉で,魚の骨のようなユニークな形をしています。(写真5)

 京都八坂神社において,大晦日から新年にかけて朮(おけら)祭という神事が行われ京都の人々の年中行事になっています。その際に焚かれるのがこのオケラの根茎です。これは燃やした時の匂いが疫病を追い払うと考えられたようです。

 オケラの名前は古語のウケラ(宇家良)が変化したもので,その名で万葉集にも詠まれています。その語源については諸説ありますが,綿毛に包まれた若芽を,昔の雨具である「うけら」に重ね合わせたもの・・という説もあります。

 万葉歌人に愛でられ山菜としても親しまれていたオケラですが,かつては京都周辺の山麓jに広く自生していたものが今は数が減ったようです。本園でも限られた場所でしか見られませんが,そのちょっと変わった風情をお楽しみください。