秋風渡る水辺に咲く花〜ミゾソバ〜
2016.10.03 更新
長谷池を渡る風も涼やかになってきました。その周囲の木々も少し色付き,彩りの秋が近いことを告げています。その長谷池の八つ橋付近,初夏にカキツバタが咲き乱れていた水辺で,今はミゾソバが可愛らしい花を咲かせています。(写真1・2)
ミゾソバはタデ科イヌタデ属の一年草で,北海道から九州にかけて分布し,朝鮮半島や中国でも見られます。小川や沼沢地などに生育しますが,やや富栄養な水質の場所に群生することが多いようです。
茎先につく赤紫と白に染め分けられた花弁が美しい花ですが,5裂していて花弁に見える部分はガク片で,花弁はありません。(写真3)これはタデ科植物に見られる特徴です。8本あるオシベに紛れて分かりにくいのですが,メシベ(1本)の先は3つに割れています。
花同様に染め分けられたつぼみは球状につき,コンペイトウのような形になります。そのためコンペイトウグサと呼ばれることもあります。(写真4)さらにウシノヒタイ(牛の額)とも呼ばれますが,これは葉の形を牛の顔に見立てたものです。(写真5)
和名のミゾソバは「溝蕎麦」つまり溝などに生えるソバという意味で,実がソバに似ている(葉が似ているという説もあります)ことに由来するといわれています。この実は同じタデ科植物であるソバほどは一般的には食べられていませんが,飢餓の折には救荒植物として食べられていたようです。
群生するミゾソバは本園の秋景色の一つです。これらの花に,二度咲きのカキツバタが混じって華やかな景色をつくっています。水面を渡る風をお感じいただきながらご鑑賞ください。