トップ / 花・緑情報 > 森林植物園のいま(バックナンバー) /

花・緑情報

風薫る秋〜キンモクセイ・ギンモクセイ〜

2016.09.30 更新








 9月も晦日を迎え,心地よい風を感じられるようになりました。その風に乗って甘い香りが運ばれてきます。本格的な秋を告げる花キンモクセイが芳香を漂わせ,黄金色の輝きを見せる季節です。(写真1)本園ではそのキンモクセイとともに,白い花をつけるギンモクセイも咲き出しました。(写真2)今日はこの金と銀のモクセイをご紹介します。

 ともにモクセイ科モクセイ属の常緑小高木で,中国南部を原産地としています。日本への渡来は江戸時代ともいわれますが,異説もあり定かではありません。一般的によく目にするのはキンモクセイ(金木犀)ですが,基本種はギンモクセイ(銀木犀)で,キンモクセイはその変種です。

 葉の脇に橙黄色の小さな花を多数束生して,強い香りを放ちます。(写真3)香りはキンモクセイの方が強く,ギンモクセイはやや控えめです。ただどちらがよい香りと感じるかは個人差があるようです。

 花冠は4裂しており,中には2本のオシベが見えています。中央には先が尖ったメシベがありますが,これは不完全なもので,この花は雄花です。(写真4=ギンモクセイ)キン・ギンともに雌雄異株で,いずれも本邦には雄株だけしか渡来していないようです。雌花がないため果実はできません。庭木や公園樹としてよく見られる樹木ですが,これらは挿し木で増やされたものです。

 ちなみに中国酒の一つに「桂花陳酒」がありますが,これはキンモクセイの花を白ワインにつけこんだものです。

 キンモクセイの葉には鋸歯がないのに対し,(写真5)ギンモクセイの葉には細かい鋸歯があります。(写真6・7)よく見ていただくか縁を触っていただくと違いをお分かりいただけかと思います。

 モクセイの名前は漢名「木犀」を日本語音読みしたものです。犀は堅い皮膚を持つ動物のサイのことで,この木の堅い木肌をサイの皮膚に見立てたものだそうです。

 キンモクセイの香りで本格的な秋の到来を実感される方も多いかと思います。キンモクセイはあじさい坂・薬樹園など園内各所でご覧いただけます。色と香りの両方で秋をお感じ下さい。ギンモクセイは香りの道でご覧いただけます。横並びのキンモクセイと,葉や香りの違いをお確かめください。