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花・緑情報

秋草の小径に咲く花その3〜フジバカマ・ヒヨドリバナ〜

2016.09.18 更新








 3連休の中日は秋雨の一日となりました。そぼ降る雨に草花もしっとりと濡れています。

 今日は秋草の小径に咲く秋の七草の一つで,柔らかな色合いが美しいフジバカマとその近縁種であるヒヨドリバナをご紹介します。

 万葉歌人山上憶良が詠んだ歌「萩の花・・女郎花また藤袴(ふじばかま)・・」が秋の七草の由来となっており,その一つに挙げられているがフジバカマです。(写真1)

 キク科ヒヨドリバナ属の多年草で,日本・中国・朝鮮半島に分布しています。原産地は中国ですが,古い時代に日本に渡来し,万葉集だけでなく源氏物語にも現れるなどその風情が愛されてきました。ただ,現在は護岸工事や宅地開発などによる生育環境の変化でその数が激減しています。

 白い糸のようなものが目だっていますが,これは筒状の花から飛び出した花柱(メシベ)で,先が2つに分かれています。この小さな花がいくつか集まって花序を形成しています。花の先は浅く5裂しています。(写真2・3)このハカマをはいたような花弁の形と淡い赤紫の色がフジバカマの名前の由来となっています。

 ヒヨドリバナはこのフジバカマと非常によく似た姿をしています。(写真4)淡い色がついたフジバカマに対してヒヨドリバナは白い花をつけている点が違っていますが,花だけではその違いはなかなか分かりません。顕著な違いはその葉で,フジバカマは3つに深く切れ込んでいるのが特徴です。(写真5)ヒヨドリバナにはそうした特徴は見られません。(写真6)

 フジバカマ,ヒヨドリバナともに秋の渡りの途中本園に飛来するアサギマダラが好んで吸蜜する植物です。(写真7=2015/9/29撮影)これはオスが出す性フェロモンの前駆物質を作り出すために,これらの植物が持つ化学物質を必要とするためだそうです。従ってこれらの花にくるのは主にオスのようです。今年はまだ姿を見かけていませんが,もう少ししたら現れるかもしれません。

 フジバカマは本園ではあまり多く生育せず,見られるのは秋草の小径の一部ですが,ヒヨドリバナは園内各所でご覧いただけます。時期によってはアサギマダラも一緒ご覧いただけるかもしれません。