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花・緑情報

アキニレの花

2016.09.12 更新







 春から夏にかけて,多くの木々が艶やかに花を咲かせます。本園でもサクラやモモそしてアジサイなど百花繚乱です。それらの木々は夏から秋にかけて実りの時を迎え,秋の深まりとともに実を成熟させていきます。こうした中でそれらの木々に遅れること数か月。今ひっそりと花盛りを迎えているのがアキニレです。(写真1)

 アキニレはニレ科ニレ属の落葉高木で,中国や朝鮮半島など東アジアに分布し,日本では東海地方以西から九州にかけての山野や河原に生育します。

 他の木々より遅めに花を咲かせる分春の目覚めもゆっくりで,木々の緑が深まりかかってきた5月近くに若葉を出します。(写真2=4/24撮影 展開し始めた若葉)

 葉の脇に4〜6個の薄黄色の花をつけますが,(写真3)鐘形の花被片は基部近くまで裂けており,4本あるオシベがよく目だっています。(写真4)受粉した後子房がふくらんできますが,若い実にはメシベの柱頭が残っており,その先が2裂しているのがよく分かります。(写真5)

 成熟した実は翼果で風に乗って運ばれますが,木に残っている実は冬鳥の恰好の食べ物で,アトリなどが群れていることもあります。(写真6=2015/11/29撮影 実を食べるアトリ)

 ニレはニレ科植物の総称で,通常ニレという場合は春に花を咲かせるハルニレを指します。ニレの仲間では,このアキニレだけが秋に花をつけるためアキニレ(秋楡)と呼ばれます。

 ニレの語源は,樹皮をはぎ取るとヌルヌルしていることによるヌルがニレになったという説,ハルニレの韓国語Nulumに基くという説などがあります。

 アキニレは芝生広場や香りの道などにありますが,小さな花ですので高い位置にある香りの道のものは分かりにくいかもしれません。芝生広場であれば眼前で花をご覧いただけます。