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花・緑情報

秋草の小径に咲く七草〜マルバハギ・ススキ〜

2016.09.10 更新









 そろそろ秋雨の時期が近づいているようですが,今日は青い空にアキアカネが群れる秋晴れです。

 秋草の小径では,秋の七草の一つに数えられるマルバハギとススキが秋風に揺れています。

 秋の七草は万葉歌人山上憶良が詠んだ歌「萩の花 尾花葛花・・」を起源としていますが,この萩はヤマハギかマルバハギといわれています。先に咲いていたヤマハギは前に当ページでご紹介しましたので,今日はマルバハギをご紹介します。

 マルバハギはマメ科ハギ属の落葉低木で,山の尾根筋などに生育します。(写真1)

 名前の通り(丸葉萩)円形に近い楕円形の葉は,三出複葉(三枚の小葉が1セットになったもの)で長さは3cm前後です。(写真2)

 花はマメ科植物に典型的な美しい蝶形花です。(写真3)マルバハギが特徴的なのは花柄が短く,葉の間に咲いているように見えることです。(写真4)ヤマハギとマルバハギはよく似ていますが,ヤマハギは花柄が長く,葉の外につき出るように花を咲かせる(写真5)ことで区別できます。

 ススキはイネ科ススキ属の多年草で,「秋の七草」という注釈を必要としないぐらいよく知られた秋の風情を代表する植物です。(写真6)

 古来尾花と呼ばれ様々な和歌に詠まれるなど人々に親しまれてきましたが,それだけではなく屋根材や家畜の餌として,農家にとっては欠かせないものでした。各地で野焼きが行われたのは,有用植物であるススキの原を残すためです。

  十五夜のお月見にも欠かせないものですが,これは収穫物を悪霊から守り,翌年の豊作を祈願するという意味があるようです。

 花弁がないため花穂をみても花が咲いているようには見えませんが,近寄ってみると黄色いオシベと濃茶色のメシベがついた穂が見られます。(写真7)メシベがあまり出ていないのは雄性先熟で,オシベが花粉を出してからメシベが現れるためです。これは自家受粉を避けるための仕組みです。

 「ススキの葉で手を切った」という経験がある方がおられるかもしれません。これは葉の縁にのこぎり状の鋸歯があるためで,(写真8)葉の先から下に向かって手を滑らせると手を切る恐れがあるのでご注意ください。

 まだ昼間は暑さが残っていますが,朝夕はすっかり秋を感じるようになりました。風にそよぐハギとススキで秋の風情をお楽しみください。