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花・緑情報

野の菊〜オオユウガギク・シラヤマギク〜

2016.09.09 更新








 秋晴れの今日は9月9日。五節句の一つである「重陽の節句」です。陰陽思想で陽の数である奇数の内一桁で最大の数が9で,それが重なっているため「重陽」と呼ばれます。今ではあまり行われることのない行事ですが,菊の花びらを浮かべたお酒を酌み合ってお祝いをしたそうです。この日は菊の咲くころなので,菊の節句とも呼ばれています。そこで今日は野に咲く菊,オオユウガギクとシラヤマギクをご紹介します。

 オオユウガギクはキク科シオン属の多年草で,愛知県以西の本州から九州にかけての湿地や田の畔,小川の縁など比較的水分の多い場所に生育します。(写真1)

 ヨメナより一回り大きく,葉の切れ込みなどが違っていますが,よく似ておりヨメナ同様に秋の里山に咲く野菊を代表する一つです。

 頭花は直径3〜4cmぐらいで(写真2)中心部に黄色い筒状花があり,(写真3)その縁を薄青紫の舌状花が一列で取り巻いています。(写真4)

 ユウガギクの名前は優雅ではなく,「柚香」つまりユズの香りがすることからきているようです。ただその香りはわずかなようで確認はできていません。

 オオユウガギク同様に園内でよく見かける野菊がシラヤマギクです。(写真5)

 オオユウガギクとは同属の近縁種で,やや乾燥した場所に自生します。

 花はキク科植物らしい筒状花と舌状花で構成されていますが,(写真6)シラヤマギクに特徴的なのは舌状花が同属に比べてずっと少ないことです。(写真7)そのため見た時の印象も違っており,同属の仲間との区別は容易です。

 花弁が白く山地に生えるということから白山菊と呼ばれていますが,里地でも見られるため,「山」という言葉の中には花弁が疎であるという意味も含まれているのかもしれません。

  なお近縁のヨメナはヨメナ飯として食用に利用されており,これらの菊も同様に若い葉は食べることができるようです。

 雨の後心なしか秋めいた気がします。秋の野に咲く野菊で秋をお感じいただければと思います。