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花・緑情報

シモバシラ

2016.09.05 更新





 台風がもたらした雨で蒸し暑い一日になりました。そんな日には少し涼しげな話題をお届けしたいと思います。それはシモバシラです。シモバシラは「霜柱」つまり氷柱のことです。といっても今氷柱ができているわけではなく,冬の寒い日に氷柱をつくる植物がシモバシラで,(写真1)そのシモバシラが今涼やかな白い花を咲かせています。(写真2)

 シモバシラはシソ科シモバシラ属の多年生草本で,低山の森林内,特に渓流沿いなどに生育します。Keiskea japonicaという学名を持つ日本固有種の植物で,(Keiskeaは植物学者伊藤圭介氏にちなんでいます)関東以西の本州から九州にかけて分布しています。

 真っ直ぐに伸びた茎の先端から半分ぐらいまでのところにほぼ真横に花柄を出し,釣鐘型の白い花をつけます。(写真3)花のつき方やつき出すように伸びたオシベが印象的な花です。(写真4)

 冬,茎が枯れても根が活動を続けていて茎の道管に水を吸い上げ続けます。そして氷点下の冬の寒さにあうと凍りついて氷の結晶を形成します。この現象は道管が傷んで水を吸い上げられなくなったり,根が凍りついたりするまで続きます。シモバシラの名前はこの現象に由来しています。

 シモバシラの結晶は冬の寒い朝しかご覧いただけませんが,(気温によっては昼すぎまで残ることもあります)花は今ならいつでもご覧いただけます。ご散策の折にぜひご覧になってください。

 シモバシラは展示館前植え込みの何か所かでご覧いただけます。