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花・緑情報

キクの仲間〜ヤブタバコ・ガンクビソウ・コヤブタバコ〜

2016.09.04 更新








 「菊花薫る」といえば秋の時候の挨拶などに使われる言葉で,大輪の菊が咲く10〜11月ぐらいに使われることが多いようです。けれども野の花のキク科植物は今が盛りとあちらこちらで咲いています。今日はその中から,近縁でよく似た花を咲かせている3種をご紹介します。いずれも花は目立ちませんが,この時期山地の道沿いなどでよく見かける植物です。

 属名にもなっているキク科ヤブタバコ属の一年草〜越年草がヤブタバコです。(写真1)直立した主茎から放射状に枝を出し,その枝についた葉の根元から柄のない頭花を下向きにつけます。(写真2)

 咲きかけた途中で止まったような形をしていますが,これはキク科植物によく見られる舌状花と筒状花で構成された花ではなく,筒状花だけのためこのような形になっています。(写真3)

 ヤブタバコ(藪煙草)の名前は下方の葉が大きく,タバコの葉に似ていることが名前の由来です。ただし花の咲く今,その葉は枯れています。

 この種は日本全土に分布しており,朝鮮半島や中国でも見られます。ただ沖縄にはまれなようです。

 ヤブタバコ属は別名ガンクビソウ属とも呼ばれますが,その名前を冠するガンクビソウも今多く見られます。(写真4)

 ヤブタバコとは近縁で極めて花も似ていますが,一つの枝に並んで花がつくヤブタバコに比べて枝先に花がつく点が違っています。(写真5)この花のつき方がキセルの雁首(ガンクビ=タバコをつめる金属製の部分)に似ていることが名前の由来です。

 もう一種うなだれるように花をつけているのがコヤブタバコです。(写真6)花の咲き方などはガンクビソウによく似ていますが,ガンクビソウの花が樽型なのに対し,この種は椀型なので区別は難しくはありません。(写真7)

 ヤブタバコよりも花が大きいのにコ(小)ヤブタバコと名付けられているのは,タバコに似た葉がヤブタバコよりも小さいためこう名付けられたようです。

 本園ではいわゆる観賞用の大きな菊の花はご覧いただけません。その代わりの野に咲く菊花で秋をお楽しみください。