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花・緑情報

初秋の野に咲く花その2〜ヌスビトハギ・アレチヌスビトハギ〜

2016.08.29 更新









 今日は久しぶりの本格的な雨になりました。もちろん雨による災害も懸念するところではありますが,乾ききった木々にとっては干天の慈雨です。

  今日は雨にたたずむ野草の中から,園内のあちらこちらで見られるヌスビトハギとアレチヌスビトハギをご紹介します。

 ヌスビトハギはマメ科ヌスビトハギ属の多年草で,山間部の草地や森林周辺に自生します。日本では北海道から沖縄まで全国で見られ,日本以外では中国・台湾・朝鮮半島などに分布しています。

 長い花序にまばらにつく花は,大変小さいですがマメ科の特徴的な蝶形花です。(写真1・2)中にはすでに実をつけているものもありますが,(写真3)この実がヌスビトハギの名前の由来となっています。ヌスビト(盗人)はいわゆる泥棒で,「足音を立てないように足の外側だけつけて歩いた足跡がこの実に似ている」ことからきているようです。

 この実はいわゆる「ひっつき虫」の一つで,表面に細かい毛がたくさん生えており,それがマジックテープのように人の服や動物の毛に付着して移動し仲間を増やします。

 アレチヌスビトハギはヌスビトハギと同属の近縁種で,北アメリカを原産地とする帰化植物です。日本には比較的近年に渡来したようで,西日本に多く東の地方には少ないようです。(写真4)

 ヌスビトハギと同じ蝶形花ですが,こちらはずっと大きく華やかです。この旗弁(上方にある1枚の花弁)の基部には黄緑の斑がありますが,これはガイドマークまたは蜜標と呼ばれ,虫に蜜のありかを知らせ呼び寄せるためのものです。(写真5)

 この実もやはりひっつき虫ですが,ヌスビトハギの実が2節なのに対し,アレチヌスビトハギは2〜5節と実も大きいのが特徴です。(写真6)

 ヌスビトハギとアレチヌスビトハギは生育環境も少し異なっており,ヌスビトハギが主に林内や樹下など薄暗い場所で見られるのに対し,アレチヌスビトハギはさくら園など陽がよく当たる明るい場所で多く見られます。また葉も似て非なるもので,ともに三出複葉ですが,ヌスビトハギがやや丸みを帯びるのに対し,(写真7)アレチヌスビトハギは細身でシャープな形をしています。(写真8)

 これらはいずれもいわゆる「雑草」ですが,よく見ると秋らしい花を咲かせる初秋の花です。ご散策の折にその風情をお楽しみください。