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花・緑情報

初秋の野に咲く花その1〜ツリガネニンジン・ウド〜

2016.08.28 更新








 酷暑の夏もここ数日で少し空気が変わってきたようです。8月中30℃を下回ることがなかった最高気温も昨日30℃を下回りました。本格的な秋ももうそこまできているようです。そしてさくら園周辺を巡る秋草の小径では様々な秋草が咲き始めています。今日はまず淡い青紫が美しいツリガネニンジン(写真1)と山菜で知られるウドの花をご紹介します。(写真2)

 ツリガネニンジンはキキョウ科ツリガネニンジン属の多年草で,北海道から九州にかけて自生し,千島列島や中国にも分布しています。

 茎に輪生する枝の先に釣鐘状の花を下向きにつけます。花冠の先は浅く5つに裂け,花柱(メシベ)が長くつき出した姿が可愛らしい花です。(写真3・4)

 白くて太い根茎は,生薬に使われる沙参(しゃじん)で鎮咳や去痰などに薬効があるそうです。ツリガネニンジンの名前は,この根を高麗人参に見立てたことに由来しています。

 その若葉やつぼみが山菜として利用されるウドは,ウコギ科タラノキ属の多年草で,北海道から九州にかけての林縁や山野に自生します。

 茎の上部に球状の大きな散形花序を多数つけ,小さな花をたくさん咲かせます。(写真5)花は薄緑色の5弁花で,5本あるオシベがよく目だっています。(写真6)

 秋には球状の液果が実り,熟すと黒紫色になります。(写真7=2015/10/30撮影)この果実には3〜5個のゴマ状の種子が入っています。

 山菜としては上記のように若葉やつぼみが食用にされますが,一般的に「ウド」として栽培販売されているものは早春に暗所で育てた若い茎です。

 ウドは成長が早く大型で茎も太くなりますが,その茎は中空で食用にも材にもならないことから「ウドの大木」という言葉があります。

 ウドの語源については「不明」とされることもあるようですが,一説によると茎が空洞であることの虚(うつろ)が転訛してウドになったということです。

 まだすぐに秋・・というわけにはいかないかもしれませんが,秋を告げる花で小さな秋をお感じいただければと思います。