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花・緑情報

サルスベリ

2016.08.25 更新









 23日・24日と地蔵盆が行われていた地域も多いと思います。地蔵盆が終わると夏も終わり・・とはいえ,酷暑の今夏はそう簡単には終わりそうもありません。けれども季節は確実に進んでおり,夏の終わりを彩る花,サルスベリが見頃を迎えています。(写真1)

 サルスベリはミソハギ科サルスベリ属の落葉小高木で,中国南部を原産地とし,日本には江戸時代以前に渡来したといわれています。これは中国に渡った禅僧が持ち帰ったようで,寺院などに大きなサルスベリがあるのもそうした理由があるようです。

 枝先に円錐形の花序をだし,美しい花を」咲かせますが,(写真2)6枚ある花弁が縮れているのが特徴で,英語名Crape myrtleのCrapeは縮緬(ちりめん)で,この花を表しています。花弁の根元は細くなっており,花柄のようにも見えます。(写真3)

 ピンクの花弁によく映えるのが,たくさんある黄色いオシベの葯(やく)です。これは生殖能力を持たない花粉を出し,虫を引き寄せ食べられるのが役割です。そして虫がそれを食べている間に,周囲にある長く伸びた花糸を持つオシベの葯に触れます。(写真4)この葯は目立ちませんが,出す花粉は生殖能力を持っており受粉に寄与します。こうした仕組みも植物が生き残るための知恵といえるでしょう。

 この長いオシベの花糸に紛れて分かりにくいのですが,よく見ると同じような色のメシベが見つかります。(写真5)

 サルスベリの名前の由来は,いうまでもなくそのツルツルとした「猿も滑る」ような木肌からきています。(写真6)これは樹皮が剥がれやすいためで,剥がれた樹皮が落ちずについている木も見られます。(写真7)同じような木肌を持つナツツバキやリョウブも,地方によってはサルスベリと呼ばれることがあります。

 別名百日紅と呼ばれ,漢字表記でもこう書かれますが,これは長い期間花を咲かせることに由来しています。ただ一つ一つの花の寿命が長い訳ではなく,たくさんのつぼみが次々と花を咲かせるため,結果として長く花をつけます。満開のように見える花序を見てもつぼみが見られます。

 本園で見られるものは主にピンクの花を咲かせるものですが,アジア区では白い花のものもご覧いただけます。(写真8)

 ゆく夏を惜しむがごとく咲き誇るサルスベリの花で季節の移り変わりをお感じいただければと思います。