トップ / 花・緑情報 > 森林植物園のいま(バックナンバー) /

花・緑情報

キツネノ・・・

2016.08.08 更新










 動物の名前がついた植物は数多くあります。ネコヤナギやイタチハギその他枚挙にいとまがありませんが,圧倒的に多いのが「イヌ」です。山と渓谷社「日本の野草」には14種,「日本の樹木」には17種が載録されており,犬と人間のつながりの深さが見られるようです。ただ多くはよい意味では使われておらず,イヌザンショウのように実が辛くない・・つまり人間の役に立たないというような意味で使われていることが多いようです。

 哺乳動物のほかにもスズメやカラスなどの鳥類もよく名前につけられています。

 今日はこうした動物の中から,今よく見られる「キツネ」をご紹介します。

 しばらく彩りがなかったロックガーデンの深い緑の中に,浮かび上がるように花を咲かせているのがキツネノカミソリです。(写真1)

 花だけを見るとユリの仲間に見えますが,ヒガンバナ科に分類される球根植物です。それは葉のない立ち姿をご覧いただければお分かりいただけるかと思います。(写真2)葉は早春に展開し,花茎ができるまでに枯れてしまいます。

 その特有な色合いの花は,6枚の花被片と6本のオシベ,1本のメシベで構成されています。(写真3)

 そしてその印象的な名前は,細長い葉をカミソリに見立てたところからきているようです。なぜキツネなのかは諸説ありますが,「花の色がキツネの体色に似ている」という説もあります。

 「キツネノマゴ」という変わった名前から花を想像するのは難しいのですが,草むらの中で小さな花を咲かせる可愛らしい草本です。(写真4)キツネノマゴ科の一年草で,野原や道ばたで普通に見られます。

 紡錘形の花穂にピンクの花をつけますが,一度にはつけず,ポツンポツンと1〜2個花をつけるのが特徴です。(写真5)その唇形の花の真ん中には,白い星形の模様が入っています。(写真6)

 その名前はふわりとした花穂をキツネの尻尾に,花を孫ギツネに見立てた・・というのが一説ですが,これも諸説あり真相は定かではありません。

 もう一種,園内のあちらこちらで見られる黄色い花,キツネノボタンです。(写真7)

 キンポウゲ科の多年草で,溝のそばや湿り気のある道ばたなどに生育します。

 特徴的なのがその実で,(写真8)その形からコンペイトウグサと呼ばれることがあります。

 その名前のボタンは,牡丹に葉が似ていることに由来するというのが定説のようです。(写真9)キツネについては諸説ありますが,有毒植物であることから「気味の悪いもの」というような意味でつけられたという説もあります。

 上記「日本の野草」にはもう一種キツネアザミが掲載されていますが,これは花期が終わっています。