トップ / 花・緑情報 > 森林植物園のいま(バックナンバー) /

花・緑情報

立秋は野の花で〜ミズタマソウ・ツユクサ〜

2016.08.07 更新








 「秋来ぬと 目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる」(藤原敏行 古今集)

 早いもので今日8月7日は立秋,暦の上ではもう秋です。初秋には野の花が多く見られるようになります。それでもまだまだ暑い頃ですので,今日はその中から涼しげな名前を持つミズタマソウとツユクサをご紹介します。

 ミズタマソウはアカバナ科ミズタマソウ属の多年草で,半日陰の林縁や林床で生育します。(写真1)日本では北海道から沖縄まで全国に分布しています。

 茎先にまばらに小さな花をつけますが,その花は2枚の花弁,2枚のガク片そして2本のオシベというちょっと変わった構成です。メシベは1本ですが柱頭が2裂しています。(写真2)

 その花の付け根にできる果実は球形で,白い毛がびっしりと生えており水滴のように見えます。(写真3)それがミズタマソウ(水玉草)の名前の由来です。

 露を集めたような青い花弁が美しい花,ツユクサはツユクサ科ツユクサ属の一年草で,ミズタマソウ同様全国で見られます。(写真4)

 別名月草といわれ万葉集にもその名で数首が詠まれています。午後には萎れるその儚さが,ひっそりとした美しさとともに日本人の心情に合っているのかもしれません。

 青い花弁が目立つため2弁花と思われがちですが,長く伸びたオシベやメシベに隠れるようにもう1枚の白い花弁がついている3弁花です。(写真5)その後ろに見える透明のものはガク片です。

 オシベも複雑で長く伸びた2本のもののほかもう2種類のオシベがあります。それはX(エックス)型の3本(写真6)と人(ひと)型の1本(写真7)でどちらも花粉を出さずに虫を引きつけるためのものともいわれています。(人型のものは花粉を出すという実験結果も報告されています。

 ツユクサの語源については「露を帯びた草」つまり朝露を受けて咲き始めるためという説,色を付ける「付き草」からきたという説などがあります。

 つい見過ごしがちな野の花もじっくり見れば美しいもの,変わったものがあります。ご散策の折には園路沿いにもご注目ください。