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花・緑情報

もう一つのタマアジサイ

2016.08.06 更新







 昨夜本園付近では夕立がありました。局地的な雨だったようですが,ここしばらく雨に出会っていない園としてはまさに干天の慈雨です。久しぶりの雨に洗われた緑は一段と鮮やかです。

 さて,先日「真夏のあじさい」タマアジサイをご紹介しましたが,今日は天津の森や西洋あじさい園で咲くもう一つのタマアジサイをご紹介します。(写真1=天津の森のもの)

 このタマアジサイはヒマラヤから中国南部・ネパール・台湾・インドネシアなどに分布し,日本のタマアジサイとは近縁種です。この仲間はまだ研究途上で,その分類については諸説あります。また本園の種は交雑種とも考えられるため,中国系タマアジサイ別名ヒマラヤアジサイの一種としてご紹介します。

 花が咲いた様子は日本のタマアジサイと似ていますが,タマアジサイが一つの花柄を中心に花をつけるのに対し,このタマアジサイは花柄が広がった形になっています。(写真2)そして特に違う点は,日本のものが大型の総苞に包まれて球状になっている(写真3)のに対し,中国系のものは小さな三角形の苞が多数集まった形で,このつぼみだけを見るとタマアジサイの仲間とは思えません。(写真4)

 この両性花は美しい藤色ですが,日本のタマアジサイよりも濃い色で「青」と呼ぶ方が適切かもしれません。(写真5)白い装飾花は日本のものより大きく,鋸歯(きょし=のこぎり刃状の切れ込み)が入っているのが特徴です。(写真6)

 

  天津の森に咲く中国系タマアジサイは,モニュメントから少し奥に入ったハンカチノキの根元辺りでご覧いただけます。西洋あじさい園のものは,同園から薬樹園に向かう途中のホンアジサイの奥に位置しています。いずれもやや皆様方の目に留まりにくい場所ではありますが,少しだけ足を伸ばしていただき,もう一つの真夏のあじさいをお楽しみください。