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花・緑情報

マツグミ

2016.08.02 更新






 8月は葉月。「葉落ち月」からきているという説が有力ですが,稲の穂が張る「穂張り月」,台風がやってくる「南風(はえ)月」など諸説があります。

 さて「葉」といえば,さくら園近くにあるアオトドマツの上部に針葉樹ではない葉をつけている植物が見られ,今赤い花を咲かせています。これはマツグミです。(写真1・2)

 マツグミはマツ科の樹木に寄生する常緑低木で,ヤドリギ科マツグミ属に分類されます。関東以西の本州・四国・九州に分布し,以前は珍しい植物ではありませんでしたが,松枯れ病の広がりに伴うマツの減少により目にすることが少なくなりました。

  葉は革質で厚く,先端が丸くなったへら形をしています。(写真3)花は円筒形ですが,(写真4)高所で咲いているため肉眼では赤い色ぐらいしか分かりません。しかし青葉トンネルの両側,ヒメコマツやトガサワラにも寄生しているようで,園路に落ちた花が見られます。その花は先が4つに分かれており,4本あるオシベと1本のメシベが見えています。(写真5)この花粉はメジロなどの鳥類が媒介するようです。

 「寄生」と記しましたが,葉を持ち光合成を行うため,正確には水分と無機栄養を寄生主に依存する半寄生です。

 グミの名前は,5〜6月につける赤い球形の実をグミの実に見立てたものです。

 寄生主ともども常緑のため,普段はなかなかその存在を感じにくい木です。ぜひ花期の今ご覧になってください。