トップ / 花・緑情報 > 森林植物園のいま(バックナンバー) /

花・緑情報

季節に先がけて〜キキョウ・ヤマハギ〜

2016.07.14 更新









 秋の七草・・のイメージは9月以降のものですが,そのうちのいくつかはすでに花をつけています。まだ梅雨も明けていない時期ではありますが,花が美しい間にご覧いただきたくご案内します。

 秋の七草は万葉歌人山上憶良が詠んだ歌「萩の花 尾花葛花撫子が花 女郎花また藤袴 朝貌(あさがお)が花」によって定められました。最後の朝貌がなにを指すのかは諸説ありますが,一般的にはキキョウのこととされています。そのキキョウがさくら園で咲いています。(写真1)

 キキョウはキキョウ科キキョウ属の多年生草本で,日当たりのよい山野に生育します。日本,朝鮮半島,中国を原産地とし,歌に詠まれているように万葉の昔から秋の風物詩として親しまれてきました。

 真っ直ぐに伸びた茎の先につける紫で星形の花が美しく,切り花などにもよく利用されています。

 雌雄同花ですが雄性先熟で,オシベから花粉が出ている時はメシベの柱頭は閉じており,(写真2)オシベが役割を終えた後メシベの柱頭が開きます。(写真3)これは自家受粉しないための仕組みです。

 この花のつぼみは風船のように膨らんだ可愛らしい形をしています。(写真4)英名はこの形に由来していてBalloon flower(風船花)と呼ばれています。

 キキョウの名前は中国名である桔梗(きちこう)を日本語音読みした「ききやう」からきています。

 もう一つ今咲いている七草の一つがヤマハギです。(写真5)

 ハギは先の憶良の歌の冒頭に挙げられ,草冠に秋と書く秋を代表する花です。枕草子でも「萩いと色深う枝たをやかに咲きたるが・・」とその風情を称えています。

 マメ科ハギ属の落葉低木で,沖縄を除く全国の低地や山地の日当たりのよい草地などに自生します。

 枝先の葉の腋から総状の花序を出し,紅紫色のマメ科植物らしい蝶形花をつけます。(写真6)

 この花は5弁花で,帆船の帆のように立ち上がった1枚の旗弁(きべん)と2枚の翼弁そして下側にある2枚合わさった船弁からなっています。(写真7)オシベとメシベはこの船弁に隠れていますが,探せばシベが出ているものが見つかります。(写真8)

 ハギと一口にいっても20種ほどの野生種が知られています。ただ憶良が挙げたハギはこのヤマハギかマルバハギだといわれています。

 ヤマハギは園内各所に見られますがが,キキョウと同じさくら園付近でもご覧いただけます。一足早い秋の気配をお感じください。