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花・緑情報

薬樹園にて〜ヤブカンゾウ・クチナシ〜

2016.07.13 更新








 ついこの間まで華やかな彩りを見せていた西洋あじさい園ですが,アナベルやガクアジサイを除いてそろそろ花の時期も終わりかけています。その西洋あじさい園の隣に位置する薬樹園の一画が色付いています。それはヤブカンゾウです。(写真1)

 以前はユリ科に分類されていましたが,APG分類ではススキノキ科ワスレグサ属とされています。日本各地に分布していますが,古い時代に中国から渡来したという説もあります。

 花は八重咲きで,赤味がかったオレンジ色をしています。(写真2)花茎は1m近くなり,その先に数輪の花をつけます。この種は三倍体であるためにオシベ・メシベを持たず種子もできません。近縁種のノカンゾウは一重でオシベ・メシベを備えています。(写真3)この種は北苗畑前でご覧いただけます。

 カンゾウの名前は漢名である「萱草」を日本語音読みしたもので,萱(かや)は細長い葉を持つ植物の総称です。別名で属名にもなっている「ワスレグサ(忘れ草)」は花が一日で終わると考えられたためにつけられたという説もありますが,実際には数日もつものが多いようです。万葉集にはワスレグサの名で数首が詠まれています。

 同じ薬樹園で甘い香りを漂わせているのがクチナシです。(写真4)アカネ科クチナシ属の常緑低木で,東アジアに広く分布し,日本では静岡県以西の森林に自生します。

 その磁器のように澄んだ白い6弁花は静かな雰囲気を漂わせています。オシベで見えている部分は葯で,花糸は花の筒部に隠れて見えません。(写真5)

 秋につける実に薬効があり,山梔子(さんしし)として日本薬局方に登録されています。(写真6=2015/11/21撮影)これは消炎や鎮痛などの効能があるほか,黄色の着色料として食物にも使われています。クチナシの名前もこの実に由来しているという説もあります。それは熟しても割れないため「口無し」と呼ばれるようになった・・というものです。

 クチナシには八重の品種もあり,(写真7)これは香りの丘などでご覧いただけます。清楚な白い花と甘い香りを同時にお楽しみください。