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花・緑情報

ムラサキシキブとその仲間

2016.07.11 更新








 「いずれの御時にか 女御・更衣数多さぶらひける中に・・」は世界に知られる文学「源氏物語」の冒頭ですが,その作者紫式部の名前を冠したムラサキシキブが可愛らしい花を咲かせています。(写真1)

 ムラサキシキブはシソ科ムラサキシキブ属の落葉低木で,北海道南部以南から琉球列島まで,ほぼ日本全土に分布しています。

 淡い紫色で葉の腋に多数つく花は釣鐘状で先が4つに裂けています。一つ一つはとても小さな花ですが,花弁と4本ある花糸の紫,葯の黄色が美しい取り合わせとなっています。(写真2)

 ただムラサキシキブというと,花よりもその紫に輝くような美しい実の方が知られており,(写真3=2015/10/3撮影)庭木としての利用も実の鑑賞を目的とすることが多いようです。

 ムラサキシキブの近縁種に,丈が低いコムラサキがありますが,果実がまとまってたくさんつくのはこのコムラサキの方で,ムラサキシキブはまばらにつきます。上記の写真3もコムラサキのものです。コムラサキは花序も整然と美しく並んでいます。(写真4)

 コ(小)ムラサキに対してオオ(大)ムラサキシキブという変種もあります。(写真5)これは写真では分かりにくいのですが,樹高が高く葉や花も大ぶりです。

 また果実が白い近縁種もありますが,(シロミシキブ,シロバナコムラサキ)(写真6=2015/10/3撮影)これは花も白で,ムラサキシキブとはまた違った清楚な美しさです。(写真7)

 ムラサキシキブという典雅な名前は,紫色の実が敷き詰められたようにつくため「紫敷き実」また「紫茂実(むらさきしげみ)」と呼ばれ,それが訛ったというのが一説です。また江戸時代の植木屋がその実の色から連想して「紫式部」と名付けた・・という説もあります。いずれにせよその美しい実に由来しているようです。英語名もJapanese beautyberry「日本の美しい実」です。

 ムラサキシキブは園内各所で,オオムラサキシキブやコムラサキ,シロシキブなどは多目的外周路や薬樹園などでご覧いただけます。その美しい実に先駆けて咲く可愛らしい花をお楽しみください。