トップ / 花・緑情報 > 森林植物園のいま(バックナンバー) /

花・緑情報

野の花〜ウツボグサ・オカトラノオ〜

2016.07.04 更新








 ここ数日は梅雨の中休みで真夏日が続いています。ここ森林植物園でも,この夏初めて30℃を超えました。そんな強い日差しの中園内の路傍に咲く草花をご紹介します。

 道ばたの花とは思えない,美しい青紫の花を咲かせているのはウツボグサです。(写真1・2) シソ科ウツボグサ属の多年生草本で,日本全土から中国,シベリアなど東アジアに広く分布しています。

 特徴的な花穂からシソ科植物らしい唇形の花をたくさん出しています。その上唇は帽子のような形をしており,下唇は3つに分かれ,真ん中の裂片に細かい切れ込みが入っています。(写真3)この花が落ちたあとは花穂が残り,枯れたように茶色になります。そのため夏枯草(かごそう)と呼ばれます。二十四節気をさらに3候に分けた七十二候で,夏至の初候「乃東枯」(なつくさかれる)の夏草はこのウツボグサのことです。

 ウツボグサの名前からは歯が鋭く獰猛な海の魚が想像されますが,本種のウツボは「靱」つまり弓矢の矢を納める入れ物のことで,その花穂の形が似ていることに由来しています。(写真4)

 もう一つの道ばたの花がオカトラノオです。(写真5)同じ道ばたでもウツボグサが日当たりのよい場所に咲くのに対し,オカトラノオはササの茂みや草むらの中に群生します。

 特徴的なのは「トラノオ」(虎の尾)の名前の通り,その花穂が直立せずにくにゃりと曲がった姿で,尻尾のように見えます。(写真6)ただトラの尻尾ほど大きくはなく,子ネコの尻尾ぐらいんの大きさです。

 サクラソウ科オカトラノオ属の多年生草本で,ウツボグサ同様東アジアに分布します。

 花穂にたくさんつく白い花は5弁花でオシベも5本です。(写真7)

 近縁種に湿地に生えるヌマトラノオがありますが,こちらは花穂が曲がらず真っ直ぐに立ち上がります。この種も本園で見られますが,花期はもう少し後になります。

 ウツボグサ・オカトラノオともに自生種ですので園内各所で見られますが,ウツボグサはさくら園付近,オカトラノオは青葉トンネル近辺に多く見られます。少し変わった夏の花をお楽しみください。