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花・緑情報

あじさい通信2016その8〜バイカアマチャ・ノリウツギ〜

2016.07.02 更新








 あじさい散策期間も残すところ一週間と少しになりました。ただ多種多様な本園のあじさいは,見頃を迎えたばかりのアナベルや各種西洋あじさい,そしてこれから開花していくタマアジサイなどまだしばらくお楽しみいただけます。今日はその中で,見頃となっている少し変わり種のあじさいをご紹介します。

 この花をご覧になってあじさいの仲間と思われる方は少ないのではないでしょうか。(写真1)これはあじさい園に咲くバイカアマチャです。

 アジサイ科バイカアマチャ属の落葉低木で,静岡県以西の本州から九州の太平洋側に自生します。

 反り返った白い4枚の花弁に黄色い葯(やく)が美しい花です。オシベは100本以上あり,メシベは2本です。(写真2)この両性花の横についているのが装飾花です。(写真3)通常の装飾花は大きくて目立ちますが,この種の場合は両性化の方が大きくはるかに目立つという変わった花です。装飾花についているつぼみはほとんど開花することなく落花します。

 名前にアマチャとついていますがヤマアジサイ系のアマチャではなく,アマチャに木や葉が似ていることからつけられた名です。(写真4)バイカ(梅花)は花が似ていることに由来します。

 そして名前・木の姿ともにあじさいらしくないのがノリウツギです。(写真5)

 あじさいというとせいぜい1〜2m程度の低木が思い浮かびますが,このノリウツギは5mにもなることがあります。

 北海道から九州に分布し,林縁や草原そして湿原など多様な環境に適応します。本園でもあじさい園以外にも園内各所でご覧いただけます。

 花は枝先に円錐花序をだし,(写真6)5枚の花弁と10本のオシベを持つ小さな両性花(写真7)の周りに4枚のガク片を持つ装飾花が点々とつきます。

 ウツギとつきますがアジサイ属の一員で,この名前は枝の髄を抜くと空洞になる「空木」からきています。ノリは「糊」つまりこの皮からとれる粘液が,和紙を漉く時の「ねり」(繊維間の粘度を高めるためのもの)として使われることに由来しています。

 あじさいというと手まり咲きがイメージされますが,こんな少し変わったあじさいを愛でていただくのも一興かと思います。