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花・緑情報

半夏生

2016.07.01 更新







 7月文月を迎えました。今日1日は雑節の一つである半夏生(はんげしょう)にあたります。これは七十二候の一つ「半夏生ず」に基づく暦日で,この日までに「畑仕事や水稲の田植えを終えておく」という農事にとっては大切な日です。近畿地方の一部ではこの日に蛸(タコ)を食べるという習慣があります。それは田に植えた苗がタコの足のようにしっかり根付くという願いを込めてのことだそうです。

 半夏生はハンゲ(カラスビシャク)という草(本園内では確認できていません)が田に生えはじめる頃を農事の目安にしたものですが,もう一つハンゲショウの葉が白く変わるころでもあります。(写真1)

 ハンゲショウはドクダミ科ハンゲショウ属の多年生草本で,日本では本州以南の日が当たる湿地に自生します。本園では長谷池の一画,八つ橋沿いでご覧いただけます。(写真2)

 葉が出てしばらくは緑色ですが,ちょうど今頃から白く変化し始め,7月半ば過ぎには多くの葉が白くなります。(写真3=2015/7/16撮影)

 花は穂状の花穂を持ち葉の付け根についています。(写真4)そして多くの花が白くなるころに,白くて小さな花を咲かせます。(写真5=3と同日)

 白く変わる葉は苞葉で近縁種のドクダミの花弁のように見える白い部分と同じです。(写真6)これは受粉を助ける昆虫に花のありかを知らせるため,つまり装飾花と同じ役割を果たしています。葉が白化する植物はほかにはマタタビが知られています。

 ハンゲショウの名前は半夏生の日に合わせたかのように葉の色を変えること,そして半分化粧したように(半化粧)見えることを重ね合わせてこう呼ばれるようになったようです。

 まさに季節そのものの花,ハンゲショウは爽やかな風渡る長谷池のたもとでお楽しみください。