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花・緑情報

ササユリ

2016.06.13 更新






 「雨後のタケノコ」という言葉がありますが,夜来の雨はモリアオガエルの産卵も促し,展示館前の滝池ではまた樹上の泡が増えました。梅雨時ならではの光景ですので,ご来園の折にはぜひご覧ください。生命を育む雨は樹下の草やササも育てますが,そのササの茂みの中に白く浮かぶようにササユリが咲いています。(写真1・2)

 ササユリはユリ科ユリ属の球根植物で,本州中部から九州にかけての山地の草原や森林に生育する日本固有の種です。

 漏斗状の花を茎先につけますが,その花被片は白とも淡い赤ともいえる微妙な美しさです。(写真3)また6本あるオシベの先につく,鮮やかな赤褐色の葯(やく)がさらに美しさを際立たせています。(写真4)そしてヤマユリほど濃厚ではありませんが,顔を近づけると甘い香りが漂ってきます。。

 ササの茂みなどで生育するため,それが名前の由来のように感じられますが,実際には葉がササに似ていることが本当の由来のようです。(写真5=画面右がササユリの葉 左をササの葉)

 かつては普通に見られ万葉集にも詠まれていますが,近年は減少の一途をたどり今や希少種になっています。これは森林で柴木を刈り取ったり,薪炭林として手入れすることが少なくなったことが理由の一つに挙げられています。

 ササユリは自生種ですので人知れず咲いているものもあるかもしれません。梅雨の晴れ間にササユリを探してご散策いただくのも一興かと思います。