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花・緑情報

あじさい通信2016その1〜シチダンカ〜

2016.06.04 更新






 今日は夕刻から雨との予報が出ています。朝方から鉛色の空が広がり,空気にも湿り気が感じられます。梅雨近しを感じさせる空です。そんな梅雨空に似合う花がアジサイです。そろそろ本格的なあじさいシーズンで,あじさい坂を埋めるヒメアジサイも色付いてきました。今日はそんなあじさいの中から「幻の花」シチダンカについてお伝えします。(写真1)

 シチダンカは,あじさいの基本種の一つであるヤマアジサイの一品種で六甲山の特産種です。

 装飾花が特徴的で,八重咲きの花弁状のがく片は先が剣状に尖っており,それが重なり合って星のように見えます。(写真2)シチダンカ(七段花)の名前は,この装飾花が重なって段になっている様子を表したものともいわれています。両性花もつけていますがほぼ退化しておりすぐに落ちてしまします。(写真3)そのため両性花がないものが目につきます。

 この花は,幕末のオランダ商館付の医師で博物学者でもあるシーボルトが著した「日本植物誌」に載録されていましたが,その後人々の目に触れることがありませんでした。そして約130年が経った1959年,六甲ケーブル沿いで見つけられた種が日本植物誌のシチダンカであると同定されました。このことから「幻の花」や「六甲の名花」と呼ばれています。

 淡い青が美しく,特に雨上がりなどは透き通るような美しさを見せますが,(写真4)落花までに薄紅や藍色に変化することもあります。(写真5)

 シチダンカはあじさい園で一番多くご覧いただけますが,沢の池周辺や西洋アジサイ園入口その他園内各所でご覧いただけます。儚く美しい花をお楽しみください。