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花・緑情報

ブラシノキ

2016.06.02 更新







 6月水無月は爽やかな晴れのスタートとなりました。もっとも梅雨時の水無月は水月(みなづき)が語源という説もあり,しばしの晴れ間のようです。その青空によく映える鮮やかな赤い花,ブラシノキがブリスベーンの森で咲いています。(写真1)

 ブラシノキはオーストラリア東部を原産地とするフトモモ科ブラシノキ属の常緑小高木で,非常に特徴のある形をした美しい花をつけます。その形はブラシノキの名前の通り,ビンや試験管を洗うブラシのような形をしています。(写真2)

 この花を特徴づけている長く伸びているものはほとんどがオシベです。その赤い花糸と黄色い葯が美しい対比を見せています。(写真3)メシベはたくさんあるオシベに紛れて分かりにくいのですが,花の咲き始めにオシベに咲きだって伸びてくるので,その折ならば確認することができます。(写真4)花弁は地味な色で,オシベに埋もれており,開花後には落ちてしまうため,これも咲き始めにしか確認できません。(写真5)一つの花穂にたくさんのオシベを持つ花が集まって,このブラシのような花を形づくっています。

 この樹木は実も特徴的で,枝に並んでついているところを見ると虫の卵のように見えます。(写真6)この実は枝についたまま何年も残り,10年近く発芽能力を持ち続けます。そして乾燥地帯である原産地において,極度の乾燥や山火事になった時,この実が弾け種子をだします。これは乾燥や火事で植物がなくなった時,真っ先に芽を出して優占種になろうとする戦略だということです。

 名前の由来はいうまでもなくその形によりますが,和名の別名であるハナマキ(花槇)は葉が槇に似ていることに由来しています。金宝樹というおめでたい別名もありますが,これは金色にも見える葯の色からきているようです。

 ブリスベーンの森に咲くブラシノキは,この種以外にも花が枝垂れるものがあり,この後この種と入れ替わるように咲くはずです。その折にはまた違った風情の美しい花をご覧いただけます。