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花・緑情報

夏は来ぬ〜ウツギ〜

2016.05.30 更新







 「卯の花 匂う垣根に ホトトギス早やも来鳴きて・・」(夏は来ぬ 佐佐木信綱作詞)

 6月を間近にして,園内に聞こえるホトトギスの声とともに卯の花と呼ばれるウツギの花が見頃を迎えています。(写真1)

 ウツギはアジサイ科ウツギ属の落葉低木で,北海道から九州にかけて分布しています。山野に普通に生えますが,歌にもあるように生け垣や庭木としても利用されています。

 側枝の先に円錐花序を出し,白い花をたくさんつけます。(写真2)その花は5枚の花弁にオシベが10本あり,その先の黄色い葯が真っ白な花弁によく映えています。(写真3)

 「夏は来ぬ」には「卯の花匂う・・」と歌われていますが,ウツギの花にはほとんど香りはなく,顔を近づけても匂うことはありません。この「匂う」は匂い立つように咲く,つまり美しく咲き誇っている様子を表しているようです。

 この実は球形で花柱が残り,子どもの頭のように可愛らしい形をしています。(写真4)この実は長く枝に残り,花期の今でも枝についています。

 ウツギの名前は漢字で「空木」つまり茎が中空になっていることに由来しています。この性質を生かして,ウツギ笛として子どもの遊びに利用されています。(写真5)茎が中空である植物は他にも見られ,・・ウツギと名付けられているものもあります。

 このウツギの近縁種にちょうどひと月ほど前に花をつけていたヒメウツギがありますが,他にもサラサウツギが今花をつけています。(写真6)八重咲きで少しピンクを帯びた花弁が美しい花ですが,ウツギの園芸種で古くから庭木などに利用されています。

 今園内各所ではこのウツギと少し前にご紹介したヤマボウシが見頃となっています。緑深まる初夏の園内で白い競演をお楽しみください。