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花・緑情報

ヤマボウシ

2016.05.26 更新








 今日は梅雨の接近を感じさせるような,湿った空気と曇り空が広がっています。そんな空の下ですが,爽やかな白い花をたくさんつけた木々が目だってきました。それがヤマボウシです。(写真1)

 ヤマボウシはミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属の落葉高木で,本州から九州にかけて分布し朝鮮半島や中国,台湾にも生育しています。この樹木の中国名は「四照花」ですが,枝一杯に花をつけ白く四方を照らすような姿をよく表しています。(写真2)

 庭木や街路樹などとしても利用されていますが,本来は山の谷筋など水があり,水はけのよい場所に自生する樹木です。

 「白い花」と前述しましたが,この花びらのように見える白い部分は総苞(そうほう)と呼ばれる葉に近いものです。花は中心にある淡黄色の部分で,小さな花が球状に集まっています。(写真3)この花は4枚の花弁と4本のオシベ,そして中央に1本のメシベがあります。(写真4)これが数十個集まって集合花を形成しています。

 総苞の部分は咲き始めは黄緑色で,(写真5=5/3撮影)これを見ると葉に近いことがよく分かります。この部分は成長するにしたがって白くなり,やがて野山を白く染めるようになります。

 夏も終わりに近づいたころ球形の実をつけますが,この実は熟すと甘く食用になります。また果実酒にも適しているようです。(写真6=2015/8/17撮影)また秋が深まると紅葉し,花同様に人々の目を楽しませます。(写真7=2015/10/24撮影)

 この種の近縁に街路樹や庭木に利用されるハナミズキ(アメリカヤマボウシ)があり花も似ていますが,ハナミズキの方が一か月以上花期が早く,果実の形も違っています。

 ヤマボウシ(山法師)の名前はこの花の部分を僧の頭に,4枚の総苞を僧衣に見立てて僧兵になぞらえたものです。

 ヤマボウシは園内各所でご覧いただけますが,香りの丘やスポーツ広場周辺などご散策の方があまりおいでにならない場所でもきれいに咲いています。お時間が許す方は少し足を伸ばしていただき,咲き誇る白い花をお楽しみください。