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花・緑情報

二つのウツギ〜ハコネウツギ・タニウツギ〜

2016.05.20 更新









 ・・ウツギと名前がつく植物は数多くあります。その代表がそのものの「ウツギ」ですが,すでにご紹介したヒメウツギや今園内で多く咲いているコガクウツギ,そしてツクバネウツギなど多種多様です。これらは同じ仲間とは限らず,アジサイ科・バラ科・スイカズラ科など多くの科にわたっています。今日はその中から今華やかに咲き誇っているハコネウツギとタニウツギをご紹介します。(写真1・2)

 ハコネウツギはスイカズラ科タニウツギ属の落葉低木で,北海道南部から九州にかけての沿海地に自生する日本固有種の植物です。

 花弁は漏斗状の鐘形で,先が5つに裂けています。(写真3)この花は両性花で5本のオシベと1本のメシベを持っています。花の特徴は咲き始めが白でやがてピンクに,そしてやがて赤に変わっていくことです。そのため様々な色が混じって大変艶やかです。(写真4)この美しさが愛され庭木としてもよく利用されています。花以外の特徴としては,その実が冬に種子を出したあとも枝に留まり,花が咲くころもそのまま残っていることです。(写真5)これを見れば花がなくともこの種であることが分かります。

 ハコネ(箱根)ウツギと名付けられていますが,沿海性のこの種は神奈川県の箱根には自生していません。これは近縁種でよく似ており,山地性であるニシキウツギとの混同によるものではないかといわれています。

 タニウツギはハコネウツギと同科同属の近縁種であり,この種も日本固有種です。ただ自生地は北海道の西部や北陸・山陰などどちらかというと雪が多い地方です。

 花の形はハコネウツギとよく似ていますが,タニウツギは色が変化せず,美しいピンク色です。そして大きさもやや小ぶりです。(写真6・7)またハコネウツギはつぼみが白なのに対し,タニウツギはピンクで容易に見分けることができます。(写真8)

 最初にウツギの名前が様々な種類の植物につけられていることを挙げましたが,これはウツギ(空木)の名前は茎が空洞の木を指す一般名詞であり,そのため多くの種類の植物にその名前がつけられたことによります。また枝が空洞でない木にも「ウツギ」とつけられたものがありますが,これは旧暦の四月つまり卯月(うづき)に花をつけることから「うづき」が訛って「ウツギ」になったもの,またウツギに花が似ているということでウツギと呼ばれるようになったものなどがあるようです。

 ウツギと名前がつく植物はウツギをはじめ,これから夏場まではしばらく開花が続きます。この時期は初夏の華やかな2つのウツギでお楽しみください。