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花・緑情報

サンザシ

2016.05.17 更新







 昨夜の激しい雨から一転,晴れ上がり気持ちの良い青空が広がっています。

 今日はウメに似たバラ科植物らしい5弁花を咲かせているサンザシをご紹介します。(写真1)

 サンザシはバラ科サンザシ属の落葉低木で,中国を原産地としています。

 枝先に散房花序(花柄の長さが下ほど長く花が平面的に広がるもの)を出し,5弁の白い花を咲かせます。(写真2)ガク片も5枚でオシベは20本,メシベは5〜6本です。(写真3)この花の咲き始めはオシベの葯が淡赤紫色であり,メシベの黄色も鮮やかで,花弁の白と美しい対比をなしています。(写真4)

 花も美しいのですが,秋につける赤い実がとりわけ美しく(写真5=2015/10/2撮影)この植物を特徴づけています。

 原産地中国からは江戸時代に渡来しましたが,それは薬用植物として持ち込まれました。そして薬用に利用されたのがこの美しい実です。この実を天日で乾燥させたものが生薬の山査子で,健胃・消化・整腸剤として用いられています。さらに近年の研究では血行改善・高血圧防止などの生活習慣病対策にも有効であることが分かっています。こうした生薬としての利用以外にも,果実酒・ドライフルーツなど広く利用されています。

 サンザシの名前もこの実からきており,生薬の中国名山査子を日本語音読みしたものです。この名前は山査(さんざ=クサボケ)に実が似ていることに由来するとのことです。

 サンザシには黄色い実をつけるものもあり,キミノ(黄実の)サンザシと呼ばれています。(写真6=2015/10/26撮影)

 サンザシは西門に向かう園路,ナツツバキ林の少し先に群生しているほか,薬樹園や天津の森でもご覧いただけます。花をお楽しみいただいた後はぜひ秋に実もご鑑賞ください。